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「ごめん、そんなにイヤだったのか。楽しかったから、またやりたいと思ったんだけど、無理強いは良くないな。うん、いいよ。僕、一人で何とかやってみる」「あ? 待て待て待て! お前なんか勘違いしてねーか?」「え? だから譜面起こしでしょ?」「違うよ。それは任せろって言ったろ」「違うの? じゃあ何?」「誘惑すると食うぞって話」「え? 誘惑なんてしてないぞ。それに昼ご飯の前にあんなにしたじゃんか。せめて夜まではぁ、ダメ。我慢させたくないけど、でも僕、身体がもたないよぉ」 もにょもにょ言って困った顔でオレを見る。「ごめん、我儘言った。ちゃんと我慢する。あーあ、でも可愛すぎる奥さんを持つのも大変だな」「んー? かっこよすぎて、超イケメンの旦那さまを持つのも大変だぞ?」「そうか? オレのが大変だろ。天才催眠術師の術にすっかりやられて、ますますメロメロなんだぞ。その内、可愛い愛妻への想いで胸が焦げるかもな」「そんなにぃ……。どきどきさせられると困る。僕だって君の術にやられてる。すぅは、知らないだろうけど天才術師はすぅの方だよ。その瞳でじっと見るだけで簡単に心を持ってちゃうんだから。もー」 照れた顔でそう言って頬を染める。「ふふふ。じゃあ、天才同士だな。似合いで丁度いいな」 笑いながら彼女の頭をくしゃっと撫でると、彼女もへへっと笑う。『おいで』と腿をぽんぽんと叩くと彼女が膝の上に座る。後ろからすっぽりと腕におさめるみたいに抱き包む。「しかし、こんな才能があるとはなー」 楽譜を眺める。「えへへ。まぐれかもなー」 と彼女。「まぐれだってすげーだろ。でもそう言えば、自作曲はよく歌ってるな。料理してる時、うどんのうたとかなんか」「ふふ。今さーもっとてきとーなヘンな歌だったよなーって思ったろー」 一瞬言葉に詰まる。彼女がそれを見てぷっと吹き出す。慌てて弁解する。「あれはあれで楽しくていいよな」「ん、どうせなら楽しんで料理する方が美味しいの出来そうだろ? それに、さっきのはすぅの歌だからな。やっぱいつものとは違うかも」「やっぱり、オレの歌なんだ? 歌詞からそうかな? とは思ったんだけどよ……」「ふふ、嬉しそうな顔。気に入った?」「ああ、すごく。それに、かなり嬉しい。ありがとうな。またさ、一緒に歌作ろうな。そうだ、ネットで調べてみたらなんか方法があるかも」「うん。譜面起こし、っと。あ、ソフトとかあるって。歌うだけで」「簡単そうだな。って何、ヘンな顔してんだ?」「だって、これ小野瀬さんや小笠原さんが使いそうなソフトっぽい。こんなの僕分かりそうもない」「あ? そんなに難しくもないんじゃないか? マニュアル見れば大丈夫じゃねぇ?」 そう言ってみるが『Non,non.(だめだめ)』と手と首を振る彼女。「はぁー。そうか、お前、面倒くさいんだな。はい、はい。分かりました。ったく、しょーがねーな。オレが覚えて優しーく教えて差し上げますよ」「えへ。すぅ、ありがと」 満面の笑みで言われると、何でもきいてやりたくなる。つくづく彼女に弱いオレ。(でも、それも幸せで、悪い気はしないがな)「いいよ。お安い御用だ。任せとけ。なあ、ちょっと歌ってみるか?」 頷く彼女とさっきの歌をハモってみる。(やっぱりこの歌、好きだ。オレの歌か。書きとめられて良かった) 二人の歌声が、夕方のオレンジ色の光に染まる部屋に優しく響いて行った――。――スリー・ツー・ワン――End.
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