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「なあ、ピアノ。弾けるようになったろ?」「え? まあ何とか弾けるってレベルで君や小野瀬さんの域にはほど遠いけどね」「そうか? お前の弾くの、お前の料理と同じで優しい感じがしてオレは好きだけど?」「それはぁ――」「好き好きフィルターか?」『ん』と頷く彼女に笑う。「いいんだよ。本当に好き好きなんだから。それに、まだ催眠術も効いてるしな。天才催眠術師さん、父さんがくれたあれでなんか弾いてくれ」 父さんが去年のクリスマスプレゼントにくれたYAMAHAのデジタルピアノ P-105B。部屋の隅に置いてありヘッドホンをして彼女が空き時間に、よく練習している。「いいけど、失敗しても笑わないでよ? 曲は?」「笑うワケねーだろ。それに、姫は殆ど失敗しねーだろ? 曲はお任せで。しかし、どうせくれるんならもうちょっと奮発してくれてもいいのに。あの人金持ちなんだから」「何言っちゃってんのぉ? それじゃお義父さんがケチったみたいじゃん。違うよ? ピアノ買ってくれるって話になったから、僕がさ色々調べてこれが欲しいですってリクエストしたんだよ? すごっく気に入ってるもん」「知ってるー。小野瀬さんに相談に行ったんだよなあ。で、お気に入りなんだろ」「え? 君にも相談したじゃん」「小野瀬さんの後でなー」「ちょ、ちょっと? 他意は無いからね? 勘違いして、ヤキモチ妬かないでよ?」「はい、はい。じゃあ癒しの曲にしてくれ」「い、癒し? やっぱ勘違いしてそー。でもそうか、癒しかぁ、うーん、癒しぃ……」 リクエストに応えようと彼女がピアノの前で考える。ここからだと横顔しか見えないが、唇が尖がっている。多分、無意識。ちょっとおかしく、それでいて可愛い。小さく、くすりと笑い淹れたての珈琲を口に運ぶ。曲を決めた彼女が弾き始める。珈琲の香りが広がる中に、彼女が紡ぐ音がやわらかな旋律を奏でていく。(なんて贅沢。音にも性格が出んのかな。優しいやわらかい音なんだよなあ。すごく彼女らしい演奏でやっぱり好きだな) 楽譜を見ながら数曲弾き、また考える顔をして徐に弾き始めた。知らない曲だった。誰の曲か訊ねようかと思っていると彼女が歌い出した。訊ねるのは後にして、目を閉じて歌を楽しんだ。聴き終わり彼女の元に行く。
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