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──ひな祭りはピンクのケーキで。── 何気なく点けたTVで、ひな祭り特集をやっていた。見るなり彼女が『わぁ♪』と目を輝かせた。その声に、画面に目をやると有名な洋菓子店のひな祭りケーキを紹介してた。「ひな祭りケーキだ。可愛い! あ、中のスポンジ、ピンクと緑……苺とメロンのスポンジだって。桃とか苺とか挟んであるんだ……うひゃー旨そう! 良いなあ」「食べたい? 食べたいなら作ってやる」「ピンクのケーキ? 作ってくれるの? 面倒じゃない?」「ああ、楽勝。これよりもっとお前が好きそうな、可愛いやつ作ってやるよ」 そう言うと『きゃー♪』と大喜びして抱き付いて来た。「あはは。そんなに嬉しいのか?」『うんっ!』と目を輝かせた彼女を腕に抱き『じゃあ楽しみにしとけよ』と言ったのが数日前。 そして、三月三日を迎えた。ひな祭りだけど平日の今日。日中、なんやかんやと忙しい一日だった。帰宅して来ると、彼女はぐったりとしてる。「疲れた?」「うん、ちょっと」「顔色もあんまり良くねーな。飯の支度はオレに任せて、着替えてゆっくりしてろ」『ごめん』と言いつつもパジャマにカーディガンを羽織り、素直にソファーで身体を凭れて休む彼女。ブランケットをかけてやり食べられそうな物を聞く。あまり食欲もなさそうなので、ひな祭りらしくないが鍋焼きうどんにする事にした。 取り分けてフゥーフゥーして冷ましてから渡してやると、ゆっくりだが何とか食べている。 彼女は具合が悪くなると食えなくなる。(好きなもんのが食えるかと予想して、作ってみたが。やっぱりこれで正解だな。食べられて良かった)「調子悪そうだな。風邪引いたか。食ったら早めに寝ような」 頷く彼女に一応、聞いてみる。「ケーキ、食べられそうか?」 どうやらひな祭りなのを忘れていたらしく、その言葉で思い出し申し訳なさそうな顔で言った。「あ、うん。食べたい。ごめん。僕、ひな祭りなのに何も用意出来なくて──」「ストーップ、そこまで。ひな祭りは女の子のお祝いだから、お前は用意しなくて良いの。お前はお祝いされて、ただ楽しめば良いんだよ。だから気にすんな。ちょっと待ってろ。今、リクエストのケーキ、持って来るから」 ケーキをとって来ると彼女は『わぁ……可愛い』と言って子供みたいな顔になった。 白とピンクのケーキの上にオレと彼女のチビキャラ雛。「これ、昴と僕だ。僕達が作ったお雛様と一緒! ピンクのクリームって苺?」「そっ、オレと姫のお雛様ケーキ。苺クリームと生クリームたっぷりだ。ピンクの可愛いケーキってリクエストだったからな。気に入った?」 彼女がブンブンと頷く。 いつものようにケーキとついでに二人の写真なんかも撮ってワクワク顔の彼女に切り分ける。「フフ~ン♪ 中もピンクだぞ。どうだ」「うはぁ♪ ピンクのスポンジだ。TVと一緒~♪ 可愛~い♪ ねぇ食べて良い? あ、ひな祭りの歌、唄うのかな?」「フッフフ……でも、もう食いたいんだろ? そんな顔してる。ひな祭りの歌は後にして食べな。そうだ、食わしてやるよ。ほら、あーん」『あーん』と言いながら口を開ける彼女に一口大にしたケーキを入れてやる。モグモグした後、頬っぺを押さえ『うぴゃ~♪』と声をあげる。「うっまーいっ! めっちゃうまー♪ はぅ、幸せですぅ! ありがとう! 昴」 大喜びの彼女に目を細め、微笑む。(さっきまでぐったりしてたから今日は無理かと思ったけど。今日もこの顔、見られて──)「オレも幸せ」「あ、昴も食べて、食べてー。美味しーよー」 君が『あーん』と口に入れてくれるケーキは、途中で味見した時より幸せな味がする。「旨い! オレって天才?」 笑いながら聞くと、彼女は目をキラキラさせてブンブンと頷き褒めてくれる。「うん、うん! 昴天才ー! サイコー! 大好きー!」 輝く笑顔でオレに抱き付く君。 何でもない日常が、君のくれるものでキラキラしてくる。 二人でじゃれ合い、笑い合い、ケーキを食べさせ合った。 ● ○ ● ○ そして、今。 隣であどけない顔でスヤスヤと寝息を立てている君を、そっと撫で呟いた。──いつも、ありがとう。良い夢をみろよ── 今もまだ、ゆっくりじんわりと、胸の中に広がる幸せを感じながら色んな事に感謝して彼女の頬におやすみのキスを落とし瞳を閉じた──。──ひな祭りはピンクのケーキで。──End.
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