「ペンだ。あっ、名前入りか。へぇー」
「ん、ボールペン。よく分かんないけどさ、ウォーターマンのやつが書きやすいんだって言うからそれにしたの」
嬉しくて書いてみたくなり書斎の机にメモを取りに走る。書いてみると確かに書きやすい。
(きっと沢山探したんだろうな)
「どう? 書きやすい? 万年筆よりボールペンのが仕事でも使うかと思ったんだけど……万年筆のが良かった?」
ちょっと心配そうに聞いて来る。
「いや、これ気に入った!」
本当に嬉しくて、礼を言いながら彼女の頬にキスをした。
「毎日、使うよ。姫、ありがとう……」
そうオレが言うと彼女は『ふふ』と柔らかく微笑んだ。
それから、彼女お手製のケーキを食べた。彼女は元々料理は出来る方だ。それに加えて丞一郎に習っただけあり、今回も旨かった。
「うん、良い味だ」
「んー、本当に? 遠慮して無理してない?」
「本当だって。旨い。オレの好きな味だ」
そう言ってパクパク食べた。
「ふふ……本日はご満足頂けましたか? ご主人さま」
彼女が笑顔で聞いて来る。
「ああ、最高のバレンタインだ」
「それは良かった。食べ終えたらチョコレート風呂でゆっくり疲れを癒してね。今夜はマッサージ付きですよ」
「マッサージ付きか? 至れり尽くせりだな」
風呂では、髪から身体まで洗ってくれて二人でゆっくりとチョコレート風呂に入った。そうして、彼女は言った通り風呂上がりに、マッサージもしてくれた。ベッドで、全身を丁寧に揉んでくれる。気持ち良くて仕事でたまった疲れが解きほぐされる。
心底癒された。本当に、至れり尽くせり……。丞一郎じゃねーが[王さま]にでもなったみたいだ。
「さあ、姫。今度はお礼に、わたくしが姫を気持ち良くさせる番ですよ。どうぞ、たっぷりとご堪能下さいませ」
「え?」
手首を掴み引き寄せ組引いた。ニヤリと意味深に笑い言うと、いきなりの事に彼女は目をパチパチさせた。
彼女の好きなアニメの執事風な口調で、ああは言ったものの……。
実の所、オレの方が限界だった。健気な彼女に愛しさが溢れて仕方がなかった。
(オレも [I love you more and more as years go by] 出会った頃よりもっと愛してるよ)
彼女の可愛い姿を見ながらチョコよりも甘い時間に溶けていった──。
── I love you more and more as years go by. ──
End.
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