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隣で(あっ!)と思う。[オレのなまえに]と怒りたい所だがポーカーフェイスで堪える。
ロベルト:全然失礼じゃないよ? 夢のような瞬間だった。柔らかい頬も、唇も、白くて美しい腕の感触も、もう一生忘れないよ? クスッ。
彼女が、さっきより真っ赤かになった。
ロベルト:あーあ、昴たんがいなかったら拐って行く所なんだけどなー。
昴:なっ……
慌てて彼女を引き寄せ、肩を抱く。
昴:ダメですよ。……オレのですから。いくらロブたんでも、渡しませんよ。
ロベルト:やっぱり? 残念だな。あれ1回じゃなくて、あんな素敵なキスを俺も毎朝してもらいたかったんだけどなー。
彼女が耳まで赤くして、ますます茹でタコのように真っ赤になった。
そこでアルベルトさんが咎めるように“ゴホン!”と咳払いをした。
アル:ロベルト様!
ジョシュア:ロベルト王子、その、キスのお返しとはなんだ?
エドワード:それはぜひ、お聞かせ願いたいものですね。
ロベルト王子はどこ吹く風と言わんばかりに飄々とした顔で、他の王子とアルベルトさんの顔を見回した。それから、いたずらな笑顔で微笑むと言った。
ロベルト:内緒だよー。
アルベルトさんはため息をつきながらロベルト王子にブツブツと文句を言い、彼女の前に立つ。
アル:全く最後まで……。昴さん、なまえさん、お二人にはお世話になりました。執事の身で僭越ですが私も大変楽しかったので、お別れが寂しく存じます。どうかお身体にお気をつけになって下さい。
『アルベルトさんはすごいね。完璧な執事さんだね。優しいしさ』と言って尊敬しつつ、多分気に入ってたアルベルトさんにそう言われて、彼女の目にじわっと涙が浮かぶ。
なまえ:アルベルトさん……グシュッ……僕も楽しかったです……色々……グシュッ……あり……グスッ……が……とう……ござ……ウッ……。
みるみる内に瞳から涙が溢れ、声を詰まらせた。
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