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その後、プリンセスが具合が悪くなり、明日の帰国は延期された。全容がまだ分からない事もあり、用心のためにホテルを移し警護も人数を増やす事になった。
王子達もプリンセスも執事達も、オレ達と彼女を褒め感謝してくれたが、彼女はあれから落ち込んだままで火が消えたように大人しい。
オレはオレで、あの、彼女の頬をダガーが掠めた光景が忘れられず、何となく彼女に声も掛けられずにいた。
こんな状態は初めてだった。ケンカのように言い合ったワケじゃない。
オレが一方的に、へそをまげてるだけだ。これじゃ八つ当たりのようなもんだと分かりつつも、イマイチ素直になれない。
夜も同じベッドに寝ながら、背を向けてしまった。
(昴:チキショー眠れねー)
ふと気が付くと、何だか小刻みに振動が伝わって来る。
(昴:あ? なんだ?)
後ろを振り向くと、彼女が背を向けて丸まりながら、震えている。具合でも悪いのかとギョッとして彼女に声を掛ける。
昴:おい、どっか具合でも悪りーのか!?
肩に手を掛け振り向かすと彼女は布団で口を押さえ、声を出さないようにして泣いていた。
昴:!! お前……。
なまえ:ご、ごめん……。
それだけ言うと、布団に顔突込んで、隠れてしまった。
驚いた──いや、違う。分かってたんだ。彼女の事だから、オレがこういう態度を取ったらきっとこうやって泣く事は予想がついてた。
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