キース王子がイライラとしながら、彼女の傍に行くと乱暴に手を引く。
(昴:チッ! 乱暴に扱うんじゃねー!)
オレはポーカーフェイスをなんとか保ちながらも内心ムカつき、ワインを飲むペースが上がる。
キース:女、俺を待たせるとは良い度胸だな。
なまえ:え? あ、す、すみません。
言葉とは裏腹に優雅な物腰で手を出されるが、彼女は謝っていた為、一瞬行動が遅れた。すると王子が、片眉を上げ彼女をジロりと睨んだ。
キース:手。
なまえ:あ、はい。
彼女は焦りながら手を重ねた。その手がぎゅっと握られ、腰に手を添えられる。
彼女は、近さに戸惑ってるみたいだ。一瞬困った顔をして、密着気味な身体を少し放し離れようとした。だが、離れかけたのを、またグイッと強引に腰を引き寄せられてしまった。
明らかに彼女はアワアワしてる。
(昴:! ……くっつき過ぎだ! あの野郎ー、ムカつく。なまえがイヤがってんじゃねーか!)
なまえ:あ、あの、も、もう少し、は、は──
キース:はぁ? なんだ? 俺と踊れて、身に余る幸せだろ?
なまえ:え?
彼女が引きつる。心配そうにオレを見た。多分オレが怒ってないか心配なんだろう。
(でも、なまえのせいじゃ、ねーしな。あの野郎にはムカつくが)
キース:おい、何考えてる。集中しろ。
なまえ:は、はい。すみません……。
(あの野郎、彼女に文句言いやがった。くそー)
あの場合謝る他ないだろうが。彼女は絶対、嫌がってる。その証拠に顔が段々、無表情になって来てる。
(可哀想に。なまえをいじめていいのはオレだけだ。愛情もねーのにいじめんなよ。ったく)
踊り終わると心なしか、ぐったりした彼女。
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