結菜と関わる内に少しはマシになりはしたが、結菜が惹かれたのは海司だった。
オレに残ったのは相変わらず野心だけ。
警察官はなりたくてなった仕事だ。仕事について不満はない。
だが心はどこか満たされず、いつも渇きを感じていた。
そんな状態を自覚していても、為す術もない。見ない振りをしつつ、ウンザリしていた。
それでも表面上はクールにポーカーフェイスを決め込んで、淡々とこなす日々。
異動して室長になまえと組む打診をされた時も(ガキのお守りなんて面倒だな)と頭の片隅で思っていた。
相棒になった彼女の第一印象は(負けず嫌いで男みたいなナリしたヘンな奴)でも、誰に対しても媚びたりせずにまっすぐな所は、悪くなかった。
なんせ組んですぐに、新人のクセにこのオレにダメ出しして来やがったし……。
なまえ:目が怖いです。鋭い。それじゃ、そのイケメン顔を以てしても、ビビって話してくれませんよ。笑って。
一瞬(なんだ!コイツ!)と思ったが、誘うように笑う笑顔にドキッとしてムカつく気持ちがぶっ飛んでしまったっけ……。
嘘も裏もない、気持ちいい位まっすぐで潔い、彼女がすぐに気に入った。
それに彼女との捜査はある意味、刺激的で退屈してる暇なんかなかった。
オレの相棒は、損得なんかまるで関係ない。腕に自信があるせいもあり、平然と危険も顧みず、獅子奮迅と突っ込んでく。ハラハラドキドキさせられっぱなしだ。
そんな普段強い彼女が、あの会議室でオレの陰に隠れて小さな肩を震わす姿を見た時、守ってやりたくなった。
異動前に海司から『彼女は苦労した』と聞かされては、いた。
だが、オレはどっか高を括っていた。
(あのまっすぐさは大した苦労も知らずに来た証だろう。苦労と言ったって所謂は、お嬢ちゃん育ち所以の苦労だろうな)
その時はまだ、そんな風に勝手に思っていたんだ。
だから室長から彼女の過去を聞かされた時、金槌で頭を叩かれたような衝撃を受けた。
(あんなチビっこいナリで、なんてヤツだ)と心を揺さぶられ、同時に自分が恥ずかしくなった。
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