小野瀬:あの時、キレていなかった筈だし、職務中で手加減してた筈なんだよねぇ。それを考えると、あながち大袈裟なだけとは言えなさそうだよね。
穂積:全く、とんでもねえな。
小野瀬:今は、猫のように大人しく愛らしいけどキレたら女夜叉『ヤクシー』の如く、鬼に変身するかもねぇ。
穂積:鬼ねえ……。
小野瀬:実際、仲間が奇襲されてやられた時にキレて暴れる彼女は、夜叉のようだったって話。彼女、あれで【夜叉の真山】と通り名がつく程、有名なんだよね。
穂積:【夜叉の真山】? あの、チビ助が夜叉?
小野瀬:いや、穂積。普段のおチビちゃんからはなかなか想像つかないかも知れないけど、これは本当。有名なの、彼女。ま、女夜叉、ヤクシーはその美しさと色香で人を惑わし喰らうとされる程、美しいらしいからねぇ。彼女にぴったりの通り名かもねぇ。
穂積:お前なー、他人事みてえに言ってんなよ?お前が首謀者だろうが。
小野瀬:女夜叉は見てみたい気はするけど、このまま殴られるのはやだなぁ。
小野瀬:マスター、もっと強いの無い?
マスター:強いの?そりゃあるよ。うちはカクテル扱ってるからね。アブサンなんかもあるよ。そう言えば日本酒で珍しいのがあるけど、穂積くん、飲むかい?
穂積:珍しい日本酒?
マスター:ああ。【八塩折仕込】が、たまたま手に入ってね。
小野瀬:八塩折(やしおり)?日本書紀で須佐之男命(すさのおのみこと)が八岐大蛇(やまたのおろち)を退治するために作った酒?
マスター:そうそう、それを再現した日本酒。
小野瀬:強そうだな。じゃあそれ穂積と昴君に出してやって。昴君が潰れてたら彼女、怒る所じゃないだろうからねぇ。
穂積:お前こそ鬼だな。でも、昴は酒強えーから潰れねえだろう。
小野瀬:だから、ガンガン飲んで。ほらほら。
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