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そうしてから、阿久津先生はちょっと思案した。咳ばらいを一つすると、いずまいを正して真っ直ぐ向き合うようにオレを見た。「あの昴君。ひとつ聞いて置きたいのよ。これは医師としてじゃなく、私個人として聞くのだけれど。いいかしら?」「はい」「では、遠慮なく。昴君……あなた、なまえ君の事は本気なのよね? 本来ならこんなこと第三者の私が口を挟むべきじゃないし、まだ若いあなたにこんな事聞くのは酷かも知れないんだけど。でも、私はこれ以上あの子が傷付く姿見たくないのよ。あの子は重いもの背負って来た子なの。あなた、逃げないで一緒に歩く覚悟ある?」 オレも真っ直ぐに阿久津先生のその真剣な瞳をしっかり見つめ返し、迷いなくキッパリと答える。「ええ、本気ですよ。オレは逃げません。あいつを守ってやりたいです。オレの隣でなまえがずっと笑顔でいられるようにしてやりたいんです」 阿久津先生は満足げに微笑んだ。「うん、合格! さすが私の妹ね。良い男を捕まえたわ! うふふ。これじゃ私より先に嫁に行きそうね」 とても嬉しそうに笑い、立ち上がる。「さあ、今日は点滴が終わったら連れて帰って良いわよ。あの子の様子みたら、私はそろそろ他の患者さん診ないといけないから。質問がなければ、これで失礼するわ。とりあえずいま聞きたい事、ある? ……そう。それならニ人共、何かあったらいつでも連絡してちょうだい。じゃあ」 一足先に白衣をひるがえし、颯爽と診察室を出て行く。それを目で追い思った。(なまえのそばに、あんな風に応援してくれる人がいて良かった)「からっとして気持ち良い先生だったな。なまえの周りは良い人が沢山いますね」「そうだな」 室長がオレの言葉に頷き、一歩後ろから肩をポンと叩き、行くかという仕草をする。「にしても、本当になかなかいい女だったなあ」 歩き出す前にもう一度先生の行った方向を見て、室長はぼそっとひとり言をもらした。「そうですね。なまえには負けますけど、いい女でしたね」 室長を振り向きニヤリとからかうように煽る。「頑張ってみたらどうです? 室長」「昴、お前も言うなあ」 そんなオレに室長は笑い、それからもう一度促された。「さぁチビ助を連れて帰るか」「ええ。室長、後でオレちょっと出て来ても良いですか?」「ん? なんだ?」「あいつの女物のスーツ買いに行きたいんです。それと今夜からオレん家に連れて帰ろうと思います」「ふーん……なるほどな。ああ、行って来い」
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