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それから、こちらに向くと阿久津先生はこう訊ねた。「おニ人は彼女が虫の類いが、極端に苦手なのはご存知?」「虫、ですか。ええ」 室長の続きを引き受けてオレも頷く。「苦手とは聞いてますが……」「オーバーに聞こえるかしら。でも、彼女の場合は子供の頃のトラウマに関係してるようなの。ただの苦手では片付けられない。酷い時は錯乱状態になるわ」 戸惑いがちなオレ達に阿久津先生が補足するように説明した。「トラウマ? トラウマって……?」 そんなこと、彼女から聞いていなかった。初耳だ。「小学校にあがるまで、彼女はここよりもっと田舎で暮らしていたの。家の近くの山に小屋があって……。そこで何かとんでもないことが起きたらしいの。その事がトラウマになってるみたい。結局、その一件が噂になって住めなくなって、彼女の一家は、こっちに越して来たのよ。覚えている大体の事は話してくれたのだけど、その時、そこで何があったのかは私にも誰にも話さない。と、いうよりは話せないの。よほどひどいことが起きたみたいね。彼女、その時の記憶が曖昧でほとんど無いのよ。彼女自身、怖いみたいで、思い出したくないって話なの。彼女のお兄さんにも、聞いてはみたんだけど……彼も当時はまだ幼くて詳しいことは知らないみたいだし。私が引き継ぐ以前はうちの父が、ここをやっててね。昔、父も彼女のお父様に訊ねたらしいのよ。でも、その件は口を閉ざして決して話さなかったって。ただ、お兄さんの話ではその頃、あの子たちのおばあさまが亡くなったって言ってたの。もしかしたら、何か関係があるかも知れないんだけど……。現時点では、確かめようもなくて。とにかく、それ以来虫が病的に怖いようなのよ。トラウマになってるの。心に傷があって癒えてないままずっと抱えてる」 そこで視線を手元のカルテに戻すと捲りながら言う。「それに、彼女には支えてくれる家族がいない。母親は亡くなって──まあ、あの母親じゃ、生きてても無理でしょうけどね。父親の方も、ねぇ……」 阿久津先生は憂うようにもう一度、深くため息をついた。*病気に関しての記述は一応、検索しネットで調べていますが、実際とは違う可能性があります。鵜呑みにしないで下さい。
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