それから。
昴:クックッ……
なまえ:あー、また剥がれた!むぅー、
彼女が目の前で真剣にロールキャベツと格闘してる。その姿が可愛いやらおかしいやら。それを見るのが、ロールキャベツを食べる時のオレの密かな楽しみだったりする。
なまえ:あひぃっ!
崩れないように工夫して巻いてみたんだけどな。どうやらまたダメだったらしい。
彼女は、ロールキャベツが好きなのに食べる時に、バラバラになってしまうのだ。
オレは彼女の後ろにまわり、ナイフとフォークを持つ手の上から手を添える。
昴:ほら、良いか?こーして……ほら?バラバラにならないだろ?
なまえ:本当だぁ。僕がやるとバラバラなのに。
昴:力、入り過ぎかな?ほら、あーーん。
あーんと口に入れるとモグモグしながら旨そうな顔をする。
昴:旨い?
なまえ:うん、バラバラよりずっと旨い!
昴:うん?そうか。…よし、じゃあ、お父さんがなまえちゃんに食わせてやろう。
なまえ:ん?昴、今はお父さん?
昴:ん、今はお父さん。ほらあーーん。
なまえ:へへ♪あーーん。(モグモグ)
昴:なまえちゃん、いっぱい食べな。
幼少期に親の愛を充分に与えられずに育った子供は甘えたい願望が強いと本で読んだ。それなら、やり直しじゃないが出来なかった分をこんな親子ゴッコでも、思う存分甘えさせてやりたいとオレは思う。
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