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● ○ ● ○ 阿久津診療所に、室長と彼女を運びやって来た。阿久津診療所はこじんまりとはしているが、きれいな診療所だった。彼女の治療が済むのを待合所の長椅子に掛けて待つと、奥から白衣の女医さんがこちらにやって来た。「なまえ君は今点滴してるから。状態の説明は……えぇーと、今日は秋月さんは一緒じゃないのねぇ? あなた方々は、どなた?」 そう言いオレを見て何事かに気付く。「あら? あなた、なまえ君の彼氏ね? なまえ君から、聞いているわ。写真で見るよりイケメンね」 ふふっと笑う。「えっ? あ、はじめまして。一柳昴です」「あ、そうそう、昴君。私は彼女の担当医の阿久津裕子です。彼女、最近あなたの話ばっかりよ。ふふふ。これじゃ話したくなるのも無理ないわね」「はぁ……」 なんと返事をしたらいいのか困り曖昧ににごす。「それじゃあ……あなたが上司さんかしら」 阿久津先生が、隣の室長に視線を向け訊ねる。「はい。私、真山の上司の穂積と申します」「へぇーお話通りのイケメンだわね。今日は、おネエ言葉じゃないのねぇ」「は?」「あら、ごめんなさい。……つい。彼女も、秋月さんちも、子供の時からうちで見てるから。なんていうか、もうただの患者と医師と言うよりも、年の離れた妹みたいなのよ。彼女、非番の時に差し入れ持って遊びに来る事があってお喋りするから、お噂はね──あ! あれよ? 事件とか話ちゃいけない事は彼女、話さないわよ。誤解しないでね」「はあ……」 室長とふたり頷く。「ただ、今の職場は楽しいって。怒ると怖いけど、優しくて頼りになるお父さんみたいなおネエ言葉のイケメン上司を始め、気持ちのあったかい人ばかりだって笑ってたのよ。ふふ……」 彼女を思うのか優しい笑顔で言う。「あの子が急に倒れてお二人共、さぞ心配したでしょね。で、病状の説明なんだけど彼女ご家族はアレだから……何かあった時は秋月さん家か、職場の穂積さんか……彼、昴君にお話してって本人の希望なんだけど。良いかしら?」「はい、お願いします」 また室長とふたりでそう頭をさげる。オレ達は診察室へ通された。「えーと、まず今は……熱中症に摂食障害から来る貧血と、睡眠障害を起こしているわ。熱中症の方は、応急処置が良かったから大丈夫よ。意識が混濁したのは、熱中症と貧血のせいね。今、点滴をしているから。さて、摂食障害と睡眠障害だけれど、彼女は夏になるとこういう症状が出るの。食が細くなって食べても吐いたり、お腹壊したり。睡眠も浅くなってあまり充分にとれない。私は元精神科医なのでメンタルケアも合わせて診ているんだけど……。彼女ね、夏はとてもストレスになるの。夏は彼女の苦手なものの時期だからねぇ……」 阿久津先生はカルテに視線を落とし、後半はちょっとため息交じりに言った。
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