彼女はオレの上着にくるまり、さっきからずーっとオレの腕の中で、グスグスと泣いている。オレがなだめても泣き止まない。人目を気にする余裕も無い位、ショックだったらしい。
それも仕方ないと思う。散々怖い目に遭った上に、あんな格好をいつものメンバー全員に見られちゃ、泣きたくもなるだろう。正直、オレも泣きたい位だ。ちくしょう!
しかも、殺人事件の応援に行ってたはずの明智さんと如月、おまけに鑑識の小野瀬さん、そして、滅多に出ない小笠原や、彼女狙いの谷田部にまで見られたなんて……。頭が痛くなりそうだ。
明智さんと如月は捜査をして行く中で山口が殺人に関与してる疑いが強まり、こちらの状況を把握しに来て、彼女の危険を知り心配で、すっ飛んで来たらしい。他の小野瀬さんや、小笠原も彼女がヤバいと聞いてじっとしていられず、室長と一緒に駆け付けたんだそうだ。
謂わば、それだけ彼女がみんなから愛されてるって事なんだが、さすがに今、そんな事考える余裕は無いだろう。
普段、感激した時以外には、泣かない彼女がこんな風に泣いてるので、犯人を連行して行った如月と谷田部、小笠原、明智さん以外の連中は、どうしたものかとオロオロしている。
後から鑑識作業にやって来た太田と細野も心配そうに遠巻きに様子を見ている。
穂積:……あー、昴、ここに居ても仕方ない。チビ助の手当てもしないといけないし。
昴:あ、はい。なまえ、帰ろう。な?
優しく諭すように言うとしゃくり上げながらも、「はい」と返事が、かえて来た。
彼女をしっかりとくるみ、抱き上げる。
穂積:病院に行ってその後は直帰で良いわ。何かあったら何時でも構わないから連絡しなさい。…チビ助、ゆっくり休めよ。
はい。と2人で返事をして帰路に着く。
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