──回想──
穂積:真山ーー、アンタ、もう上がりなさい。
なまえ:え?まだ、これ終わってません…。これが終わったらこっちを片付けないと……すみません。遅くて。
穂積:あら、別に遅くないわよ。アンタ、仕事早い方でしょ。…ただ仕事の量が多過ぎなのよ。私はそんな事言ってんじゃないのよ。アンタ、鏡見てみなさいよ。
なまえ:はぁ……。
穂積:物凄いわよ。幽霊みたい。……これは、明日でも大丈夫よ。とにかく今夜は帰りなさい。昴、アンタも上がって。この子頼むわね。
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彼女は捜査中決して弱音を吐かず、疲れた素振りを見せなかった。
が、連日の聞き込みで肉体的に、そして事件が事件なだけにおそらくは精神的にも、疲れはピークに達しているはずだ。
目の下にくっきりとクマの出来た顔を見れば、それは明らかだった。
室長もさすがに心配になり帰宅させてくれたのだ。
時刻は23時半を回った所だった。
(昴:早い時間に上がれたワケじゃねーが、帰宅出来ただけマシだ。)
死んだように眠る彼女の頭を起こさないよう、そっと撫で
昴:明日はお前の誕生日なのに、これじゃお祝いしてやる事も出来ねーな……。
「誕生日なんかやった事ない」と少し寂しそうな顔で言ってた彼女を、本当はめちゃくちゃ喜ばせてやりたかった。
ましてや付き合って初めての誕生日は明日しかない。
この仕事をしている限り、仕方ない事だと分かってはいる。
だが、やっぱり かなりがっかりしている自分がいる。
昴:きっと1番がっかりしてるのは、お前だな……。ごめんな。なまえ。
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