寝室に行くと彼女は何かを考え込んでいたが、オレを見るとフッと頬を緩めた。
なまえ:みんな、帰ったの?
昴:ああ。帰った。
なまえ:そう、あの、歯磨きして着替えたいな。お願いしても良い?
オレは彼女を洗面所に連れて行った。彼女はリハビリを頑張っているせいか、掴まっていれば暫くは立っていられるようになっていた。彼女はメイクを落とし洗顔をしながら、何事もなかったようにオレに話掛ける。
なまえ:今日、楽しかったなー。写真もいっぱい撮ったね。この着物も綺麗だったし。脱いじゃうの、なんか寂しいな。
その後、2人で並んで歯を磨いた。着物を汚さないように前屈みでそっと口をゆすぎながら彼女がそのままの姿勢で
なまえ:……昴、ありがとう……。本当に、楽しかった。良い想い出になったよ。きっと僕、ずっと覚えてるから。
と、言った。オレの位置から彼女の表情は見えない。
だが、それが何となく別れの言葉のように聴こえ、心臓がわしづかみにされているように胸が苦しくなる。
(昴:放さねー…放してたまるか。オレしか見えなくしてやる!)
黙ったままのオレを不審に思ったのか、彼女が身体を起こしタオルで口を拭いながらチラリとオレを見る。
黙ったまま口をすすぎ、彼女が差し出したタオルで口を拭う。
なまえ:昴?
タオルを置くと彼女の身体をオレの方に向けさせ顔を覗き込む。
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