死なせたくねえなら─
室長の言葉が頭の中をぐるぐる回る。
(昴:そうだ、彼女は命懸けで行動を起こそうとするに違いない。相手はプロだ。ましてや彼女は今、歩く事すら出来ねー。…死にに行くようなもんだ。ぜってー止めねーと、またあの時と同じになっちまう!)
脳裏に手術室の前で感じた恐怖がまざまざと蘇る。
(昴:冗談じゃねーよ!ぜってーなくしたくねー!何とか…何とか繋ぎ止めねーと…。どうすりゃ良い?どうすれば……)
そら:…さん、昴さん、
昴:あ?悪りー、呼んだか?
そら:大丈夫?
昴:何が?
そら:何がって、真っ青だよ。それに…手、震えてるよ。
昴:あ?……。
自分でも気が付かない内に、震えていた事にそらに言われて気付く。
(昴:そうだ、平静なんかじゃいられねーよ。オレに怖い事があるとしたら…彼女をなくす事だ。現に失う事を考えただけで、焦燥感に押し潰されそうで身体が震える)
オレは寝室から枕と掛け布団を持って来て、ソファーに起き、ステレオにヘッドフォンをさすと音楽をかけ、音楽で周囲の音が聴こえなくなるように音量を調整し、そらに渡す。
昴:そら、悪りーけど、今夜、1晩、ソレかけといてくれねーか。
そらは察したようで
そら:うん、分かったよ。
と、ヘッドフォンをつけ寝室に背を向けるようにソファーに横になり掛け布団を頭から被った。
オレは、リビングの電気を消すと彼女のいる寝室へ向かった。
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