1ー6
──彼女──
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定時後に居酒屋へ来た。個室があるのでここをよく使うそうだ。室長からのご指名で藤守が幹事をするらしい。藤守が皆に言った。
「今夜は、一柳さんの歓迎会と世田谷事件解決ご苦労さんちゅう事なんで、みなさんジャンジャンいって下さい。それでは室長、乾杯お願いしますわ」
「おう。……えー、一柳。何となく分かっただろうけどうちはこういう所だから。ま、これからよろしく頼むわ。それから一柳、藤守、
真山、よくやった! お疲れさん。みんな、今夜は楽しめ! 乾杯ー!」
『かんぱーい!』みんなの晴れやかな声が響く。
「それでですね。料理はもう頼んであるんで、飲み物だけ好きなのを頼んで下さいね」
「はあーい!」
藤守の言葉に
なまえが、元気良く返事をする。料理が運ばれて来た。それを見て
なまえが喜び、はしゃぐ。楽しそうだ。
「わぁ! 僕の好きなのだー」
「お嬢。ほら、これもやで」
藤守が牛乳パックを、渡す。
「あっ! ミルクだ! やったー!」
「は? 何でミルク?
なまえは酒、飲めねーのか?」
「あ? ちゃうで。お嬢はお酒、大好きや。そらぁ、ぎょうさん飲むしなぁ。うちのお嬢は、焼酎のミルク割りが好きなんや」
「藤守さん。僕の好きなの頼んで置いてくれてありがとう! ミルクもだけど、お料理も……嬉しい!」
「あんな、お前の好きなもん頼んでやれと言うのんは、室長が言うたんやで。後で、お礼言うとき」
それを聞いて嬉しそうな顔で『うん!』と頷く
なまえ。
「藤守ー、何余計な事言ってんのよ」
「あ、室長! ありがとうございまーす!」
「まあ、たまには飴もくれてやらないとね」
照れ隠しなのかポソッと言ったのは、
なまえまで聞こえなかったようだ。
「え? 何か言いました?」
「何でもないわよ。チビ助。一柳は何にする? アンタ、イケる口?」
「はい」
「じゃあ、飲め。ほら、アホチビ。焼酎にミルクのお子さま仕様だぞ。飲め」
「わぁ、やらせてすいません」
「あ? うちの飲み会は無礼講でしょ。そんな事気にせずに遠慮しないで、楽しめば良いのよ」
「はい。ありがとうございます! えへへ……もう楽しんでますよ!」
「なら、良かった。さ、おチビはお子さまミルクでも飲んでなさい」
「お子さまって……ミルク割りって、美味しいのにぃー。でも飲みやすくてつい、飲み過ぎるのが問題なんですよねぇー」