1ー5。
──世田谷切り裂き事件──
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今日も僕達は、星泉女学院で張り込んでいた。別件が片付いた藤守さんと合流し三人で任務に当たる。
藤守さんはジャージ姿で体育教師、昴は眼鏡に白衣を羽織り保険医、僕は女子高生として潜入している。
一階の見回りの後、外を見回る。
それにしても、昴は凄い人気だな。眼鏡も白衣も似合っててカッコいいもんなあ。でもあんなに囲まれたら、いざという時に動けるのかちょっと心配。
「
真山、何か変わった事はないか?」
「あ、藤守さんに、昴。今のところは何も──」
言い掛けた時、校舎から『きゃーあ!!』と悲鳴があがる。
昴と顔を見合せ、ハモる。
「今の! 悲鳴」
「どこからや?!」
「校舎の中からだった!」
「上かっ! あ、
真山!」
藤守さんが僕の名を叫んだ時には、僕はもう校舎へと駆け出していた。
続けて後ろで、藤守さんの『
真山、待つんや!』と叫ぶ声がしたが、聞こえないフリで構わず走り続けた。
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「ああ! あかん! 突っ走とるわ! 一柳、行くでっ!」
「何故、外じゃなく校舎内から……?」
「分からへん! それは分からへんけど、お嬢を止めんと。あいつはこういう時、めっちゃ無茶苦茶しよるんや。それこそ、何するか分からへん。ヤバいんや、急ぐで!」
「はい!」
オレは藤守と
なまえの後を追い、駆け出した。
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三階に行くと、廊下に女子生徒が一人倒れていた。僕は、駆け寄り抱き起こし声を掛ける。
「おい、大丈夫か?」
「えーぇ! なんで一柳先生じゃないのぉー」
「は? 何? 襲われたとかじゃないのか!?」
問い掛けるがその子は膨れながらブツブツ文句を言い、スマホを出し打ち始めた。
全くこっちの話を、聞いていない。
ふぅーとため息をつきながら立ち上がり、なんとなく学校の脇の歩道に目をやる。不振なヤツと前を行く女子高生が見えた。
「しまった!! 表だっ! くそー! 階段じゃ間に合わない! くっ!」
窓を開けよじ登り、下枠に立つ。
視野の端で、上がって来た昴と藤守さん……それとさっきの女子が、ギョッとしてるのをとらえた。
「あかん!
真山! 止め! 無茶はあかんで!」
「
なまえ! 何やってる! やめろ!」
制止する二人の声は、聞いたが躊躇してる暇はない。
僕は窓枠を蹴りジャンプして、すぐ前の木の枝に飛び付いた。
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「なんて無茶しやがる!」
駆け寄り止めようと伸ばしたオレの手は、わずかに届かず空を切る。
なまえは何の躊躇もなく窓枠から校舎のすぐ前の木の枝に、まるで空中ブランコでもするように飛び付いた。