昴が反論しようとした時、ノックの音がする。
叔母:はい。どうぞ。
「失礼致します」と如何にも良家のお嬢様然とした女が入って来た。
叔母:昴さん、ご紹介するわ。こちら西園寺紫織さん。紫織さんはね─。
昴:叔母さま、お話中、申し訳ありませんがこれで失礼します。
オレは、紹介を始めそうな叔母を遮り、腰を上げた。
叔母:まぁ、昴さん紫織さんに失礼よ。お座りなさい。
昴:叔母さま、結婚する気もないのにこの場に留まる方が失礼ですよ。この際ですからはっきり言って置きますが、オレは叔母さまが何と言おうが、アイツと一緒になります。アイツ以外にはあり得ませんから。
紫織:……。(顔が青ざめる)
叔母:昴さん、あなたご自分の仰っている事、分かっているの?あなたは仮にも一柳家を継ぐ身ですよ。あんな賎しい子を一柳家に入れる訳にはいきません!
叔母:あなたは今、逆上せてるだけですよ。いずれは目が醒めるわ。……そうだ。あなたの気が済むまで、あの子を愛人として傍に置いてはどうかしら。紫織さんには申し訳ないけど、良くある事ですもの。
紫織:……わたくしは構いませんわ。母からも殿方はそういうものとお話は聞いておりましたから。
昴:愛人だと?…アイツが賎しいって?フン(軽蔑した冷たい目を向けて)賎しいのはアンタ達の方だろ。…西園寺とか言ったか、オレはアンタみたいな女が大嫌いなんだよ。
叔母:んまぁ!昴さん何てこと!口を慎みなさい!
昴:とにかく、失礼します。叔母さま、今後こんなくだらない事での呼び出しは御免被ります。こう見えてオレも忙しい身ですので。失礼。
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