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それから入り口付近にたまったままだったオレ達を見て、真山が迎えに来る。室長の腕を取って『さあ、さあ』と奥へと引っ張って行く。勢いに気圧されてなすがままについて行く室長の後ろ姿を見ながら、如月達が呟くように溢す。「それにしてもまるで別人じゃない?」「いや、ホンマやで。妖精さんがおるんかと思うたわ」 それを聞きながら彼女から目が離せずに見ていると、真山が室長に座るようにと促そうとし、そこで動きを止めて室長をジーッと見つめた。室長も視線に気づき『あ?』とでも言いたげな視線を返す。真山がちょんちょんと袖を引っ張り、屈んだ室長に接近すると唇を寄せ内緒話をし始めた。(……何だ? 何を話してる? つーかオレ、何で真山がこんなに気になるんだ?) 二人を見ながら自分の気持ちが分からず、当惑していた。 ● ○ ● ○ チビ助が何か言いたげに、袖を引っ張るので屈んでやると耳元で『室長、もしかして具合良くないんですか? なんか、顔色が悪く見えますよ?』と言い、心配そうな顔をした。(俺を心配してんのか? 確かにちょっと疲れがたまってるが……全く、よく見ていやがるな) チビ助の観察眼の鋭さに、ちょっと驚く。一方で、チビ助の心使いに嬉しさを感じた。何気なく横を見ると思ったよりもすぐ近くに、チビ助の顔があった。普段とは違う愛らしさをまとうチビ助に、ドキリとしてしまい焦る。そのふっくらとしてぷるりと艶めくつやめく唇に、目を奪われて惹きつけられる。一瞬、俺の頭からいろんなしがらみが抜け落ちてしまいそうになる。もう少しで衝動にかられて、抱き寄せて唇を重ねてしまうところだった。 だが、直ぐにハッと我にかえった。慌てて艶めかしい唇から、視線をそらした。視線を外しつつも、頭の片隅に浮かんで来た思わぬ思考に動揺する。 ──もしこれが……。場所がここではなく、こいつが部下でなかったら俺は──(相手は部下の、しかもまだガキだっていうのに。そんなの相手に、何だってんだ俺は。……らしくねえ。どうかしてる。いや、違う。今のはきっと気の迷い、錯覚だ。動揺もしてねえ。大体、何で動揺するんだ。“そんな事はありえないだろう”) たった今、思った事を全否定した。俺は、そっぽを向いたまま、チビ助の頭を優しくポンポンと叩き『大丈夫だ』と答えた。そして、やっぱり惹きつけられそうなその、黒い瞳から逃れるように少し慌てて入り口付近のメンバーに指示を出した。「と、とりあえず始めましょ。そうねえ。藤守、机をずらして。みんなはこっちに座る。真山は一人すつアピールしていって。アピールが終わったら審査。全員に可愛いと言わせたら合格。真山、それで良い?」「…………」 そう話し掛けるが、返事がない。不思議に思いチビ助を見るとくりっとした瞳で真っ直ぐに俺を見つめていて、またドキッとする。
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