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「あいつ、よく下校時間に校門で待ち伏せてて、ベラベラ話しながら後ついてくんだよ。たいていこっちの都合聞かないし、言っても帰んないんだ。だから、いつも放っておいて好きにさせてたんだ。その日はバイトがない日だったんで僕は、スーパーの特売に行く予定だったんだ。その時に[超お買い得 マヨネーズ(大) お一人様一個限り、三十円]で売ってたんだよ。あいつにも並ばせてマヨネーズ買ったんだよ。でさ、あいつが『こんな大きいサイズ二個もどうすんだ?』って聞くから『なんもない時おかずに出来るし、もっとなんもなかったらマヨネーズだけで舐める』って言ったらあいつ驚いてさ、うっせーから手の甲にちょっとつけて舐めて見せたんだ。自分もやってみたいって一緒に舐めたのさ、マヨネーズ。金持ちのお坊ちゃんのあいつには衝撃的だったみたいで『こんな食べ方は初めてした』って騒ぐんだよ。あいつには他意はなくて、純粋に言ってるのは分かったんだけど。そんなに騒がれると、なんか惨めに思えて来てさ『こんなん、騒ぐほどの事じゃねーよ。僕みたいな貧乏人にはよくあることなんだ』ってヤケ気味にマヨネーズくわえてちゅうちゅう吸ってやったの。そしたら、あいつそれ奪い取って自分も真似してちゅうちゅう吸ったの。買ったばっかの僕のマヨネーズじゃん? 思わず『あ゛あーっ! 僕のマヨネーズ、直に口付けやがった! きったねー』って大騒ぎする僕の隣で『マヨネーズねぇ……ふーん、思ったよりこういうのもありだな。でもやっぱり、腹は膨れん。よし、姉さん達になんか作ってもらおう』ってあいつん家に引きずられて行く羽目になったんだ。まあ、飯ごちそうになったんだけどさ。でね、あいつが言うには[僕はその時のマヨネーズみたいに、衝撃と未知をもたらして新しい風を吹かせる]んだってさ。以来あいつは僕をマヨと呼ぶようになったの。全く、マヨなんてヘンな呼び方いやだって何度抗議しても聞きゃあしないんだ。いっつも、どこ吹く風でさ。結局こっちが折れるより仕方ないんだ。悪い奴じゃねーけど。甘やかされ過ぎたな。あいつは。こっちの都合はお構いなしで我が道を行くからなー。ホント困ったヤツなんだ。悪い奴じゃねーのが救いだけどさ」 彼女の様子から仲の良さが伝わる。たけ達とも、海司ともまた違う仲の良さに思えた。「うん? 何、そんな顔して。ふふ……ばかだなあ。僕が好きなのはすぅだけだよ」 くすっと笑い彼女の唇がオレの唇に触れた。「……なぁ、腕痛む?」「ふふふ……したくなった?」「最近、こんな時間もなかったから……」「だね。腕、気を付けながら激しくなきゃ、大丈夫、かな」「じゃあ、もし痛かったら言ってくれ」「ん……すぅ、好……」 言葉ごとキスで奪って、彼女の腕が痛まないように気を付けながら優しく抱き上げベッドルームに運んだ。 ● ○ ● ○ それから数か月後、彼女と堀崎は凛子に引き抜かれて新部署に異動した。まだ、始動し始めたばかりで今のところは三人だけだ。昨日凛子と一緒に麹町署の滝口さんをスカウトに行ったらしい。なかなか好感触だったから大丈夫そうと明るい笑顔で言ってた。忙しくしながらも、追い詰められた風でもなく、生き生きとしてる彼女。これも室長が色々動いてくれたおかげだなとありがたく思う。折を見て礼を言ったら『いいのよ。私はあのじゃじゃ馬娘のお父さんだし、アンタもかわいい部下でしょ。かわいい部下と娘が困っていたら助けるのは私の役目よ』とウインクされた。彼女にそう伝えたら『ありがたいねぇ。僕はホント幸せ者だよ。にしても、お父さんのウインク、見たかったなー。ふふふ』と幸せそうに笑ってた。この二年間が大変で苦しんでたのを知っているから、その笑顔が余計に嬉しく感じた──。──機捜の彼女。──End.
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