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一応、現場に向かう道すがらどんな事件か大まかに聞いた。「室長も昴も、本当に行くの? 中、入らない方が良いんじゃないの? すごいよ。ねぇ、小野瀬さん」「まあ、確かにね」「ああ? チビ助。俺達はそんなの平気だ。バカにすんな。なあ? 昴」「ええ」 そんな話をする内、現場に着き車を止める。一足先に車を降りた彼女に続き行こうとした時、先頭の彼女がくるりと振り返った。無表情のまま淡々と言った。「僕が、先に安全を確認して来ます。みなさんは待っていてください」 その言葉に、室長が反論を仕掛けた。何か発する前に反論は許さないとばかりに、彼女の目が鋭くなった。小野瀬さんがいうところの、獰猛な飢えた野獣みたいにおっかない目つきでけん制した。「いいですね? いてください。みなさんは銃も警棒も持っていないので、万が一でも犯人が、武器持ちで潜んでたら困りますから。堀ちゃん、僕が合図するまでお前はここで──」「行きます! 先輩、自分も一緒に──」「堀崎っ! 命令だ。いいから、言われたことを遂行しろ。お前は、ここを頼む。ここでみんなといろ。いいか? なんかあったら銃持ちのお前が守るんだぞ。周りに注意して。落ち着いてな。確認が出来たら灯りをつける。そしたら入って来い。いいなっ!」 冷たく鋭い眼光で睨み言う。反論すれば、今にも喰い殺されそうだ。そんな物凄い威圧感に堀崎は震えあがり『りょ、了解です』と言った。 彼女は表情をゆるめ、フッと笑い『うん、頼んだぞ。相棒』と建物に向かって行った。「あんなにおっかない先輩初めて見た。あの、旦那さん、さっきの……。聞いちゃったんです。すみません! あの、先輩、とっても疲れてるんです。許してあげてください。俺が頼りないばっかりに先輩に負担が行っちゃうんです。……すみません」「なまえが疲れてるのは、知ってる。大丈夫だ。気にすんな」「やっぱり昼間のアレ、気にしてたねぇ」「全くあのお嬢さまにも困ったもんだ。どんなに忙しくても、チビ助が昴をないがしろになんかする訳がねえ。あいつの、昴バカで一途なとこは変わんねえよ。なあ?」「だねぇ。大事にされてる昴くんが羨ましいねぇ。ところで、キミ達別居するのかい?」「ええー! 別居? するんですか? 旦那さんっ」 堀崎が、おお焦りで聞いてくる。「するなら、チャンスだから俺がもらうよ? 俺もおチビちゃんに尽くされてみたいしさ。うーんと甘えさせて可愛がってあげたい」「ダメだ。小野瀬はダメ。お前になんか誰がやるか。お前じゃすぐ浮気して、チビ助を泣かすだろうが。昴が要らねえなら、チビ助は俺が引き受ける。昴、返品か? 一回返品したら、もう返せって言っても返さねえぞ。それでいいなら手を離せ」「ぜーったい誰にもやりませんよ。決まってるでしょ。八つ当たりなんてオレに甘えてる証拠です。あいつが遠慮無しにわがまま言えるのは、オレに心を許してるってことなんですよ。ああやって確認してるんです。オレにもっと甘えていいのか、受け止めてくれるのかってね。そんなの全力で受け止めますよ」「やっぱりそう言うか。昴くんのおチビちゃんバカも健在で安心したよ。キミ達は変わらないねぇ。おチビちゃんも相変わらずだし。ふふ。それにしても、一人で先にっていうの、実におチビちゃんらしいよね。おチビちゃんは【大事な人達は僕が守る】って思いが強いもんねぇ」「だな。本当に、あいつは変わんねえなあ。相変わらず心配ばっかり掛けやがるところなんか全然変わらん。全く、あのじゃじゃ馬チビ助め。──おい、電気ついた。行くぞ」 玄関から居間に入ってオレと室長は思わず顔をしかめた。むわっとした鉄の臭いにツーンとくる何とも言えない嫌なにおいに、手で鼻と口をおおった。血と死臭が立ち込めている。おまけに室内には、あちらこちらに黒みがかった茶色に変色した血の跡があった。「こりゃあ、チビ助の言う通りすげえな」「ですね」 そう室長言葉を交わした時だった。隣で堀崎が青い顔で『うっ』と口を押える。室内を見て回っていた彼女が振り返る。「おい、堀ちゃん。設計図──あ? お前またかよー。ここで吐くなよ? 吐いたらおしおきな」 拳を顔の隣で握り言う顔は、目が座っていてちょっと怖い。堀崎が口を押えたままコクコク頷く。その直後、突然タァッと彼女が素早く動いた。頷いた堀崎にトンっとぶつかるように向かって行った。まるでナイフか何かで刺すみたいな恰好だった。
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