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定時になり女がオレの席付近を、うろうろし始めた。いい加減、あの女にはうんざりだ。近寄って来ようものなら、怒りを込めて睨み付け威嚇した。離れた場所で『あれじゃ誘えないわ』とか騒いで泣き出したが、オレもみんなも無視した。室長が『ほらほら、泣いてないでお家へお帰りなさい』とか言ってるようだった。だが、いつまでもビィービィー、ギャーギャーと、泣き止まず……。室長もうんざりしたように、ふぅーっと息をついた。うるさいので『うるせーぞ。仕事が終わったんなら、とっとと帰れ!』と怒鳴った。女はビクッとして泣き止むと慌ててバッグを持ち逃げるように帰って行った。イライラした気分は女が帰っても晴れなかった。(あの女、どうにかなんないのか! 腹が立つ。せっかくなまえが時間を作って寄ってくれたのにあんな言いぐさ、失礼極まりないだろう。ったく! にしても、なまえ、気にしてないといいんだけどなぁ) みんなが『チビにあんまり気にするなと伝えてくれ』と帰って行った。あの女が来てから精神的に疲れるのは、みんなも同じなのか残業が無ければ一様に疲れた顔をして、すぐに帰るようになった。最近じゃ飲みに行く事もあまりなくなった。なまえがいた頃が、はるか遠い昔みたいだ。懐かしささえ感じてしまう。つい、今と比較してしまい思わずため息が出た。「昴、今日残業?」「いえ、帰ります。あの、室長。さっきは、すみませんでした」「ああ、いいわ。こっちこそ悪かった。私が止めてればね。チビ助にも嫌な思いさせちゃったわよねえ。ふふ……あの娘ったら。さっき、チビ助に謝ったら逆にこっちが、心配されてね。最後には私の方が励まされちゃったわ。ところで、残業じゃなかったらちょこっと付き合いなさい」 そのすぐ後で『お待たせ。行こうか』とあらわれた小野瀬さんと三人で捜査室を後にした。連れて来られたのは丈一郎の店だった。丈一郎が『よう、待ってたぞ。誕生日おめでとう!』と出迎えてくれた。通された部屋に腰を下ろし、室長と小野瀬さんに問い掛ける。「予約してくれたんですか?」 この二人がオレの為にわざわざ予約してくれたというのにも、違和感があったんだ。二人ともフッと笑い『どう思う?』と逆にたずねられた。その言い方と笑いがちょっと意味ありげに思えてオレは首を捻った。そこへ丈一郎がいつものように、酒と料理を持ちやって来た。 ただ、いつもと違うこともあった。いつもと違ったのは料理やケーキをワゴンに乗せて全部持って来た事と、オレの隣に腰を下ろして一緒に加わったことだ。
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