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彼女は口をぽかーんと開けて一瞬、呆気にとられた。「す、すげー。星つき高級店なのに。セレブリティ……」「何言ってるの。きみだってもうセレブでしょ。一柳家だって大層なお家柄だよ。このくらいの店、馴染みなんじゃない?」 小笠原の指摘に、彼女はちょっとぼーっと『このくらいの……』と反復して暫し黙った後でなにやら、考え込んだ。様子を見てると彼女の瞳が、うろうろとさまよった。(ん? ちょっと様子がヘン……か?) そう思ってると、ちょっとひきつりながらひとり言みたいにぼそぼそ言い出した。なんだか、焦ってるように見えた。「あ、ああ。そ、そうか。僕、一柳家なんだ……。で、でも……ぼ、僕、全然セレブじゃないよ? こんなすごいとこ、初めてだもん……。僕、中身、相変わらず庶民。つーか、底辺もいいとこだよ? 野良猫みたいな育ちだし。セレブのお家の嫁なのに……。ひぃー、どうしよう。なんかカルチャーショック。な、なんかこう、もっとセレブらしくしないとダメなんじゃないのか? セレブ、セレブ……。うーんとぉ、えぇー? ああー! なんか、分かんない。セレブってどんなだろう? ダメじゃん。僕。ヤバい、ヤバいよ……。こんなんじゃ、一柳家の恥になるぅ」 予感的中だ。彼女がプレッシャーからパニック状態になった。最近は、結構大丈夫だったのに。たまにものすごく重圧を感じるらしく、根が真面目なだけに必要以上に追い詰まる事がある。「え? チビ、ご、ごめん。そういうつもりじゃない」 小笠原もそんな彼女を見て、伝染するみたいに焦り始めオロオロした。「小笠原、落ち着けよ。なまえも。何、焦ってんだよ。ほら、落ち着いて」 なだめるように、背をさする。彼女はすがるみたいにオレの両腕を掴んだ。不安に押しつぶされそうなのか、その身体はプルプルと微かに震え始めた。引きつった顔で下から見上げ聞いて来た。こっちの胸が痛くなる程、追い詰まって苦しそうだ。「ねぇ……昴、僕、一柳家なのに、庶民過ぎだよね? 色々知らな過ぎてさ、きみの迷惑になってるんじゃない? 僕、きみに恥かかせてたら、どうしよう……」「ばか。恥なんかかいたことねーって。これからだってオレは何にも心配してねーよ。お前はね、いつもちゃんとしてくれてるよ。そんな不安そうな顔すんなよ。ふふ。考えすぎ。大丈夫だよ。嘘じゃねーぞ? たとえばな、別荘でも立派な若奥様だった。みんな褒めてたじゃねーか。それに、父さんだって楓さんやトメだってみーんないい嫁をもらったって喜んでる。あんなに騒いでた親戚達だって今は認めてるだろう。なあ、なまえ。結婚前からずっと言ってるけどさ。お前は、お前のまんまでいいんだよ。庶民だろうがセレブだろうが、そんなのはどうでもいい。お前らしく生きればいいの。それで笑うやつがいたら、オレがやっつけてやるって言ったろう? 忘れた? あれはさ、今も有効だ。知らないことは、これから一つずつゆっくり経験していけばいいんだよ。焦ることなんてないぞ。大丈夫、大丈夫。なまえ。あのな、お前は、一柳家の嫁じゃなくてオレの嫁になったの。一柳家なんてな、おまけなんだよ。分かったか? 奥さん。何にも心配いらねーよ。一緒なら、大丈夫だって」 安心させたくて胸に抱きあやしながら『大丈夫、大丈夫』と繰り返す。最初ぷるぷると震えてたのがおさまって、落ち着いてきてのが分かった。(落ち着いたな。良かった。でも、このままじゃなまえは恥ずかしくって身動きとれねーだろうな。どうするか? んーよし)
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