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● ○ ● ○「思い出した。あの日、帰りの車の中でお母さんは『ママ友達が出来た』ってずいぶん、はしゃいでたよ。さよならした後も、いろんな話で盛り上がってすごく楽しかったって言ってね。みんな、にこにこしていたな。お母さんは住所の交換をしたとかで、しばらくの間確か……昴くんのお母さんと文通していたんじゃなかったかな」 あの映像を見て兄貴の話を聞いた後で、父さんが少しずつ思い出しそう言っていた。「そうか、あの時の彼が。なまえちゃんのお父さんだったのか。奇妙なご縁だな……とても残念な気持ちはするが、こうしてお通夜に出られて良かった」「父さん。母さんは文通していたんですか?」「ああ、そうだよ。あの後も菫は体調がいい時に手紙を出していたと思うよ。私にはどういうやり取りだったのかは、詳しくは分からないが。一度写真が届いたと、見せてくれたな。うちのどこかに、まだあるかも知れないな」「でも、オレには母さんからなまえの家族の話を聞いた覚えがないな」「それは……」 父さんが口ごもる。兄貴がそれを見て言った。「その後、おそらく母が亡くなったんですよ。多分、それで交流が途絶えたのでしょう」「実は、そうなんだ。調子が良くなさそうで心配だと菫が言ってたんだが。その後、亡くなられたと連絡をいただいて……。菫は、ずいぶん落ち込んでしまってね。ほら、お母さんも体調が芳しくなかっただろう? どうやら、自分と重ねてしまったようでね。気落ちして、お母さんも寝付いてしまって。結局、ご葬儀も行かれず仕舞いだった」「うちの母が亡くなって僕達も色々あって。それっきりになってしまったんだ」「そうだったんですか……」「ふふ。すごいな」 ちょっとしんみりした時なまえが言った。「事実は小説よりも奇なりって言うけどさ、そんな事があるんだな。なんかさー、父ちゃんが[なまえ、色々黙っててごめんね]ってお詫びに僕達に教えてくれたのかもよ? だって今夜、分かるなんてスゲーじゃん? お義父さんもいるし、みーんな勢ぞろいの今夜にだよ? きっとさ、そうだよ。ふふ。今頃、みんなでいるのかもよー? うちの父ちゃんと母ちゃんと祖母ちゃんと、菫お義母さんとさ、みんなで一緒に見守ってるかもー。ねぇ? 昴、そう思わない?」「そうかもな」「だよねー。そう思った方が楽しいし、うちの父ちゃんも寂しくなくて安心だしなー。ふふ」「ああ。だな」 そう返事を返し、ふわりと微笑む彼女の頭を撫でる。きっと今、色々思うところはあるだろうに。そう言える彼女がオレは、やっぱり好きだなとしみじみ思う。
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