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● ○ ● ○ あれから、彼女はお義父さん亡骸の傍でボーっと座り続けてる。声を掛けたら『ろうそく番だ』とぽつりと答えた。それきり動かないので、少し後ろに座り見守る事にした。石神が来て彼女に声を掛けた。 「少し休んだらどうですか? ろうそく番なら私が代わりましょう」「ありがとうございます。秀樹兄ちゃん、遅くまですみません。忙しいのに。寝る暇が無くなってしまう──」「大丈夫だ。遠慮はいらない。途中抜けるかも知れないが、明日の葬儀にも出る予定だ」「ありがとう……面倒掛けてすみません」 どこかボーっとしているのに、そう頭を下げる彼女が痛々しかった。 きっとオレだけじゃなくみんながそう感じたんだろう。室長達も寄って来た。 「チビ助。何言ってるのよ。面倒な訳ないでしょう」「そうだよ。おチビちゃん。みんなそんな事思ってないよ」「なまえさん。私達に、気を使わなくても良いですよ」 桂木さん達も心配そうに声を掛ける。「なまえちゃん、顔色が良くないわよ。ろうそく番ならいっぱいいるんだから。貴女、一柳と休んできなさいよ。疲れた時はダーリンに甘えるのが一番よ」「凛子さん。ありがとう……みんなも、ありがとう。ごめんね。なんか行き届かなくて……遅くまで付き合わせて。帰らなくて大丈夫? 僕は大丈夫だから」 さっきから彼女は[ありがとう][すみません][僕は大丈夫]それの繰り返しだ。口で言う程大丈夫には見えない。顔色は青白いし、目に光が無い。表情も無い。きっとかなりこたえてる。(そりゃあそうだろうな。親父が死んで間もないのに、あれだけ新事実を次々聞かされちゃあたまんねえよな。でも、なまえの事だからろうそく番をやるって言ったら最後までやろうとするだろうな。簡単にはきっと動かねえとみた。さあ、どうするかなあ) 思案してると、丞一郎が飲み物を持って来た。「おーい、姫。兄嫁殿に台所を借りてな。いいものを持って来た。あったかくて旨いぞ。飲みな。王様。ほら、ふうふうして姫に飲ませてやれ」『ああ』と受け取りふーぅ、ふーぅと冷ましてると彼女が丞一郎にペコっと頭を下げた。「くまさん、ありがとう」 丞一郎はでかい手で、優しく彼女の頭を撫でた。 オレが冷ましたのを、ゆっくりゆっくり飲む彼女の頬にほんの少しだけ赤身が戻って来る。そこに、今度は国達と源次郎とモモちゃん、阿久津先生、明智さんや翼さんも、みんな来た。「なまえさん」「あ、国。……そうだ。うっかりしてた。こんな時間か……国も、お前達も、もう帰らないと。もう遅い時間だからタクシーで帰れ。危ねーから」「リーダー、こんな時まで、うちらの心配なんていいよ」「姐さん、うちら残ります」「国、ミイコ、きよ、千佳、ふみ、長峰、柴ちゃん、たけ、みんな……心配掛けてすまねえな。僕は大丈夫だよ。他の皆さんも、ありがとうございます。色々すみません。でも大丈夫ですから──」「なまえくん、でもね、お姉ちゃんには大丈夫そうには見えないわよ」「裕子ちゃん」「そうよ。なまえちゃん無理しちゃダメよ」「翼ちゃん……」「ベイビーちゃん。ねぇ、ちょっとだけでも良いから休みなさい。ここに居たかったらここでもいいわよ。ね?」
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