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「私は君のお父さんを昔から知っているけど、彼は子供の頃から大変優秀でね。将来の真山家の当主は彼しかいないと言われていたんだ。亡くなったお母さんと結婚して善晴くんが産まれて、順風満帆で傍から見ても本当に幸せそうでねえ。その後できみが出来た時もたいそう喜んで。善晴くんに『お兄ちゃんになるんだよ。みんなで仲良く暮らそう』って言ってね。その言葉通り三人で、赤ん坊のきみを可愛がってさ……仲良し一家だったんだ」 別の親戚がボソッと言った。「それが、お母さんが亡くなって少しづつ変わって行ったんだよなあ」「やっぱり、あのひとを雇ったのが良くなかったよねえ……」「だねえ。今思えばそうなるなあ。きみはさ、本当に亡くなったお母さんに似てる。なんて言うか生き写しだ」 後妻は、どんどん似て来るなまえが気に入らず目の敵にし始め、隠れて虐待するようになった。暫く経ってから父親が虐待を知り、後妻を憎むようになった。どうにも許す事が出来ずに離婚しようとしたが『私を排除するなら、なまえを道連れにしてやる』と言うようになり、離婚の話はこじれた。やがて父親はなまえを虐待する後妻に、手をあげるようになる。元々そんな事をするタイプではなかったが、腹に据え兼ねたのかも知れないと親戚は言った。良心の呵責からか、あるいは現実逃避からなのか、飲めなかった酒に溺れるようになって行ったらしい。 初めて聞くショッキングな事実になまえは、顔色を無くし絶句して固まった。そこへ、彼女の兄貴の声が響いた。「そうだよ。なまえ、何もかも変わったんだよ。僕達は、みんな壊れちゃったんだ」 そう言いながら、兄貴は彼女の胸倉を掴み『バカ! バカ! 何で……何でそんなにお母さんに似てんだよ。お前見る度……辛かったよ』と馬乗りになった。そして泣きながら彼女を、ポコポコと叩いた。彼女は一瞬驚いた顔をしたが抵抗もせず、されるがままだった。下になる彼女の瞳からもツーっと涙が一筋、流れ落ちていった。オレや室長達は兄貴を止めようとしたが、彼女は手でそれを制した。暫くすると兄貴の殴る手に、力が無くなりがっくりと項垂れた。彼女は崩れる兄貴を抱き止め静かに『よし、ごめん。ひとりでつらかったな』と言った。兄嫁がそっと兄貴の傍に来て『あなた、休みましょう』と娘と一緒に支え奥に連れてった。 残された彼女を抱き起す。彼女はえらく傷付いた目をしてた。ゆっくり視線を動かし、オレを見たが言葉を発する気力も無いようだった。「なまえ……」 言葉も無く呆然する彼女に親戚達が遠慮がちに『あのー大丈夫?』と声を掛けて来る。余裕の無い彼女の代わりに言う。「すみません。彼女も今は疲れ切っています。今夜の所はこの辺で。後日必要ならば、こちらから改めてお伺いさせていただきます。本日はご足労いただき、ありがとうございました」 丁重にだが、反論の余地がない口調で言い切ってお引き取り願った。
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