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十一月に月が替わってすぐの事だった。「チビ助、電話よ。外線。そっちまわすわね」「あ、すみません」「お義姉さん? らしいわ」(お義姉さん──兄嫁という事か。珍しいな) 室長が言うのを聞きながらそう、思った。彼女も少し怪訝な顔をして『はあ……』と戸惑ったような声を出し受話器を取った。彼女の所に彼女の親戚から連絡が来る事はないと言いきっても過言ではない。彼女が重体の怪我を負った時も、結婚の際にも、連絡を取ったがダメだった。彼女曰く『普通の対応なんて期待しても無駄。そういうものと思うしかない。何せ壊れた家族だからねぇ』と苦笑いを浮かべていた。(これは、何かあったか?)「はい。お電話変わりました。お義姉さんご無沙汰しています。お変わりあり──え? 何ですか? え? あの、落ち着いて。お義姉さん、ちょっと深呼吸しましょうか? ──少し、落ち着かれましたか? えっと、ではこちらから質問しますから、お義姉さんは出来るだけ落ち着いて、分かる範囲で答えてくれますか? いいですね?」 そう電話の向こうに言い、彼女はメモ帳とペンを持った。「で、兄から電話が掛かって来たんですね? その様子がおかしかったと。ええ。動揺した様子で……え? 泣いてた? んー、それは確かに変ですねぇ。あの、その時何と言ってましたか? はあ……なるほど。どこにいるかは言わなかったんですね。あの、兄は朝から外出した訳ですか? え? 父の所へ? はあ、外泊届を出して? うーん。なら今夜そちらに連れて来るつもりだった訳ですか? え? そうじゃない? じゃあ、どこへ行くつもりだったのかな? 何か聞いてますか? 行きたい所がある? ふぅーんーー。そうですか。行きたい所ねぇ……他には何か気付いた事や、聞いていた事ありませんか? ええ、ええ。それで兄は車で出たんですよね?」 そんなやり取りをして一旦電話を切ると、今度は入居中の介護施設へと電話を掛け事情を聴いた。室長とオレは彼女のデスクの傍に行き電話が終わるのを待った。
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