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● ○ ● ○「わっ! あっ、うわぁ」 彼女のそんな声と共に“ドシン”と物音が聞こえ、重いまぶたを押し上げて見れば隣に彼女が居ない。もしやと彼女側のベッド横を覗くと彼女が座り込んだまま痛そうに尻を擦ってた。「ふっ。何だよ。落ちたのか。ほら、大丈夫か?」 笑いながら手を差し出すと『あ、ありがとうございます』と俯き加減になり、恥ずかしそうに言って手を取った。「ぶつけたの、尻だけ? 他は痛くねえ?」「は、はい。大丈夫です」「そっか。なまえ、おはよう」 おはようのキスをしようとすると、彼女がギクッとして目を泳がしますます真っ赤になった。「お前、顔、すっげー真っ赤かだぞ? うわ、熱い。熱あるじゃねーか。ほら、横になれ」 彼女の頭を冷やし熱を計る。三十七度八分ある。まだちょっと早い時間だが、室長に連絡を入れ病院に連れて行ってまた連絡を入れる事を告げる。ふと視線を感じてそっちに目をやると、彼女がじーぃっとオレを見てた。だが、オレが見たらツゥーと目を逸らした。「どうした? ツラい?」 覗き込み聞くと、おずおずと口を開く。「あの、すみません。忙しい時に迷惑を掛けてしまって。僕は一人で病院に行けます。大丈夫ですから。あの、遠慮無しに、し、仕事に行って下さい」「え?」「僕も病院が終わったら行きますから。本当にごめんなさい……」「ばーか。そんなの、ダーメ。熱が高いのに一人にしないよ。それに、病院の後もちゃんと休まないとな。身体がさ、もう限界だー休ませろーって合図送ってんだよ。大丈夫、仕事はな。オレが戻ったんだ。任せとけ。百人力だぞ? ふふっ。喉渇いたろ? ちょっと待ってろ。何か持って来るから」「……はい。ありがとうございます」(まただ……) オレはキッチンに向かいながら、小さな違和感を感じてた。彼女が、ずーっと敬語のままだ。それにオレに対して妙に遠慮してる。昨日はもしかしてまだ怒っているのかと思ってたが、どうやらそうでも無いらしい。今の彼女は言ってしまうと、馴染みのないヤツ相手に緊張し戸惑ってる。そんな感じだ。オレと彼女の間に目に見えない壁が出来てしまっている気がする。(何でだ? つーか、これ、どうしたら元に戻るんだ? 戻らなかったら? ……これは、結構困った事になるかも知れねーな。とりあえず怒らないように気を付けよう。今ビビらせて萎縮させたら、本格的に嫌われるかも知れない。それはかなりマズいだろう。これ以上あいつの気持ちが離れでもすると、元に戻るもんも戻らなくなるかも分からねーからな。そんな最悪の事態になって、あいつを失うなんて死んでもイヤだ。……やっぱり喧嘩したまま四ヶ月も留守にしたのが、良くなかったかな……はぁあぁ) 小さくため息をついて冷蔵庫を開ける。(みごとに何もねーな。本当に、ここに居なかったみたいだな。仕事に明け暮れて、その内一人にも慣れちまったって所かな。だとしたら、また一から始める位の気持ちで腹を括る必要があるかも知れねーな) そう思いながらミネラルウォーターを取り、寝室に引き返した。 状況を把握する為にも細かな点にも意識して観察する事にした。なんだか、彼女は借りて来た猫みたいに少し居心地悪そうに、小さく縮こまって寝ている。(オレだけじゃなくこの家にもちょっと馴染めねーみたいだな。うちのにゃんこちゃんはオレの居ない間に、すっかり捜査室に馴染んで捜査室のにゃんこちゃんになっちまったか。やっぱり、一から始めるしかねーかもな。彼女、元々人見知り激しい所、あったしな。まあ、ちゃんとフォローしなかったオレの責任だろうな)
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