ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「へぇー。ほんなら、中一で乗り始めって事? お嬢、バイク歴長いんやなあ。道理で巧い筈やわ」「しかも、将来プロレーサーになる腕前の人と走ってたなら上手くもなるよねぇ」「そうですよね。腕磨くなら上手いやつと走るのが一番や」 藤守と小野瀬さんで盛り上がる。明智さんが不思議そうに言う。「何でそんな歳から乗れるんだ? 確か免許は満十六歳からだろう? まさか、チビもこの人も無免許か?」「サーキット内だけしか走れんし、練習会や講習会受けて、ライセンスは取らなあかんけど、総排気量が百cc以下の四st市販車限定の草レースなら満十二歳以上なら誰でも参加出来るのがあるんですわ。そういうのに出たんやないですかね」「あ、始まるよ」 小笠原に言われみんなで画面に注目する。彼女の走りは何回も見た事があるが、所謂[街乗り]の走りとレースとでは当たり前と言えば当たり前だが、全然違う。ハラハラしながら見守ると、その内小野瀬さんの予想通りに一位争いが始まった。みんなも固唾を飲んで見守る。膝を擦りながら、コーナーを走り抜けてく。そしてカーブを抜けると直線に入る。「わー! 何、カーブ曲がる時の、この角度ー。すごい!」「見ろ。三百キロ出てる。チビ助! 無理すんな」 わーわー言いハラハラと心配しながらも、画面の彼女を応援した。結果を言えば、彼女は一位を必守した。見終わる頃にはみんな喉がカラカラで、疲れてぐったりだったので、とりあえずお茶にする事にした。「あー、チビ助がレーサーじゃなくて良かったわ。寿命が縮むわよ」「その前に、彼女がレーサーになってたら俺達、チビと出会ってないんじゃない?」 小笠原の言うのを聞いて思う。(そんな事になってたらつまんねー人生だったろうな。まあ、野心だけつーのが、どれだけつまんねー生き方なのかにも、気付かずいたかも知れないけど。でも、もしレーサーのなまえと出会って今みたいに恋に落ちてたら──オレ、心配で身が持たねー。刑事も危険と言えば危険だが、三百キロの世界なんてもっとだろ。一歩間違えれば天国行きだ。嗚呼、怖かった。本当に無事で良かったぜ。後で言い聞かせないとな。これで味を占めてまたやられちゃ、たまんねー) これが、この後喧嘩の更なる元になるとは考えもしなかった。『相談も無しにレースなんてダメだろう』と切り出したオレに、彼女が膨れた。『だって、連絡付かなかったじゃんよ。僕はちゃんと連絡したもん』から始まって言い合う内に『昴のばかっ!』と言われオレもカチンと来た。「ああ? 何だ、その態度。可愛くねー」「あ゛? 可愛くなくて悪かったね! どうせ僕は跳ね返りのじゃじゃ馬だかんな。昴はもっとお淑やかで何でも言う事をきいて、お前の後を三歩下がって付いて来るようなお嬢がお好みだったんだろ? そうすりゃあ、突然の敵からも守る事も出来るしな。でも残念でしたー。僕は大人しく守られるようなタマじゃないもんねーだ。そういうのが良きゃ、僕と別れて新しくもらい直すしかないね」 ぷいっとそっぽを向かれた。しゃらっとした顔で平然と『別れて』と気安く言う彼女にカッとし思わず強く怒鳴った。「いい加減にしろ!」「な、何だよ! 怒ってばっかいやがって。もう良いよ! 昴なんて、もう知んないよーだ。好きなだけ怒ってればいいんだっ! 四ヵ月間、ずーっとそうやって怒ってろ! ふんっ!」 この喧嘩は、非常にタイミングが悪かった。仲直りする間も無く、翌日からオレは警察大学に入校し、そのまま寮生活になった。これで、八月までは帰れない。携帯も使用禁止だし。当分仲直り出来ない。まあ、休日前夜に外泊の申請をすれば帰宅出来ない事はないが。 こうして、気の重いオレの長い研修生活が始まった。
このサイトの読者登録を行います。 読者登録すると、このユーザーの更新履歴に新しい投稿があったとき、登録したアドレスにメールで通知が送られます。