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● ○ ● ○「やあ、いらっしゃい。忙しい中、呼び出してすまないね」 みんなを室内に招き入れ、彼女が持ってた我が家愛用のカメラに気付く。「あれ、なまえちゃん。それはいつものカメラじゃないか。持って来てたのかい?」 桂木さんにもらったビデオカメラ。オレ達はこれをどこでも持って行くので、父さんの事も楓さん達や、トメ達の事も何度もこのカメラで撮っている。なので、今やみんなにとっても、思い出いっぱいのお馴染みのカメラになっている。「ええ。今日は昴が制服になるので、いっぱい撮っておこうと思って持って来たんです。頼んで昴の事も、お義父さんのカッコイイ姿も沢山撮りましたよ。でもイケメン親子のツーショットがまだなので、後で撮らせて下さいね。楓さんや、トメさん達に『見せて』ってお願いされてるんです。それに、お義母さんにも見せなくっちゃ。愛するイケメンの旦那さまと愛するイケメンの息子のカッコイイ姿、お義母さんもきっと見たいでしょうから。ふふ」 彼女はこうしてまるで母さんがいるみたいに振る舞う。実家に行く度、お土産を持参すれば仏壇に必ず置くし、母さんの写真にあーだこーだと報告したり話し掛けたりしてる。いつもそれを何気なく眺めながら思ってた。(なまえの事だから、なんか考えがあってしてんのかなあ) そしたらトメが教えてくれた。楓さんがオレと同じ事を思い彼女に聞いてたらしい。彼女は『見てるとお義父さんも昴もみんな、生きてた頃と同じようにお義母さんをとても大事に愛してるのが、伝わって来るんです。僕には、そんな風に思われてるお義母さんは、見えなくてもここにはいる気がして。お義母さんの愛情や心がまだここには残ってるような、そんな気がしたんです。そう思う内に、僕もお義母さんと会ってみたかった、そんな母親なら楽しかったろうな、そう思うようになったんです。僕には経験がないですけど聞く所に寄れば、実家に帰った時、母親に色々話をしたりするのでしょう? 親子の対話? そういうのをお義母さんとしてみたかったなって。真似事、してみたんですよ。勿論、返事は返って来ないですけど。ひとりで話す内にお義母さんが笑って話を聞いてくれてる気になって来て。ふふ、ちょっと嬉しかったんです。で、何だか止められなくなりました』と、少し恥ずかしそうに言っていたらしい。『それを聞いたら、トメにも何だか菫奥さまが居て下さる気がしてなまえさんの真似をして、お話してみたんでございます。不思議と菫奥さまが笑って聞いていて下さる気がして、嬉しゅうございました。その様子をたまたま見掛けた旦那さまが『トメまで、なまえちゃんみたいだね』とちょっと不思議そうになさったので、旦那さまにもお話したんでございます。そうしたら『へぇ、なまえちゃんがそんな事をね』と何か考えていらしゃるご様子でしたが。今では、時々旦那さまもお話されておりますよ。何だか、とても楽しそうにされてましたよ。昴お坊ちゃん、今度お戻りになられたら、昴お坊ちゃんもやってみてはいかがです?』とすすめられた。彼女は色んな所に楽しくなるような良い影響を与えてる。 父さんは長い間、こんな風に写真を撮ろうとはしなかった。だけど、彼女に『思い出を写真に残すって楽しくないですか? 後で見た時にその時の気持ちや幸せも一緒に思い出したりして──。僕は、ちょっと得した気分になります』と笑顔で言われ、その言葉に思う所があったのか、それから父さんはよく写真を撮るようになった。父さんもトメも、他のみんなも、彼女が一柳に来る前より笑顔が増えて楽しそうに見える。
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