──本編28。
アンドロイドは電気羊の夢を見る。──
最近、彼女が妙だ。ひとりで何やら考え込み、時に頭を抱え、時にぼんやりと放心してる。夜も眠れないのか、そっと起き出しリビングやベランダで煙草や酒を飲みながらやはり何かを考え込んでいる。それに、ちょっと無口になり何となく元気がねー。指摘すれば、空元気を出し無理に笑う。
その理由を、幾ら彼女に聞いてものらりくらりと曖昧にかわされる。こうなると、聞き出すのは至難の業だ。だが、考えてみてもオレには原因が思い当たらない。
(何か悩んでる筈だ。どうやって聞き出すか?)
ソファーに座るオレの膝枕でごろごろとしながらタブレットでニュースサイトを見てる彼女。様子を見ながら対策を考えてると、彼女がちらっとオレを見る。
「何? どうしたの? さっきからじぃーっと見て。あ、もしかして足を、枕にしてたから? 重たい? ごめん、ごめん。今、退く──」
起き上り掛けた彼女を捉まえる。
「違うって。重くねーよ。それに、そこもお前専用の定位置だろ? そうしてろ」
「ふふ。そこも? 他は?」
「うん? オレの腕の中とか、な。ふっ。何、にやにやしてんだよ」
「んー、僕専用っていいなあって思って」
「オレはずーっとなまえ専用だけど?」
いつものようにそう言った。いつもならここで彼女が笑って、よくある日常のひとこまになる筈が、その時は違った。
オレの言葉に一瞬瞳を揺らし、とても悲しく寂し気な顔をした。彼女はそれを隠すように、すぐに表情を変え笑った。だが、オレにはその笑顔さえどこか辛そうに見えた。
気になりやはり聞き出そうと口を開き掛けると、彼女は遮るみたいに言った。
「ふふ、こーんないい男がずーっと僕専用って素敵。贅沢ぅー。贅沢過ぎて、罰があたりそうだなあ。ふふ……」
オレが次の言葉を口にする前にまたタブレットに目を戻し、何かの記事を真剣に読み始めた。話す隙を与えない。聞くなという雰囲気が漂っている。
(これは、聞くなという事か。ふぅー。このパターンだと聞いても絶対答えないな。さっきの表情といい、この聞かないで! と言わんばかりの態度、何かあるっていう証明だとも言えるな。一体何があった?)
彼女をぼんやり眺め、髪を撫でながら推察する。彼女がふいに口を開く。
「ねぇ」
「ん?」
「*アンドロイドも夢を見るんだってさ」
「アンドロイド? 人造人間?」
「ん、そ。すごいねえ」
「夢? ロボットが? 機械だろ?」
「ん、でも人工知能とかそういうので働いているから、可能なんじゃないの? よく分かんないけどさ。ほら、こんなの見るんだって」
彼女がタブレットを差し出す。何となく奇妙な画像が記事と一緒に表示されていたのでざっと目を通す。
*本当。少し前(2015年06月頃の話でありますが)ニュースサイトにありました。ついでに、この後に出て来る、映画の話もアンドロイドと、ラヴドールの話も創作ではなく本当の話。
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