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(おまけ的後日談)──藤守兄の場合。── 仕事帰り、俺は愚弟を訪ねた。勿論、愚弟の顔を見に来たのではない。あの可愛らしく尚且、足の美しいあのひとの件を聞きに来た。愚弟が報告に来ないので、わざわざ聞きに来てやったのだ。 チャイムを鳴らすと愚弟が出て来た。「はーい。なんや兄貴か」「なんやとはなんや。これ土産」「あ、ありがとう。何? たこ焼きや。兄貴、ビールでええか?」「ああ、それと腹が減った。たこ焼きと何か」「何か? お好みくらいしか出来へんよ」「それでええ」 男二人、ビールを飲みながらたこ焼きとお好み焼きで飯を食べた。 愚弟が台所へ後片付けに立った。 俺は肝心な要件を切り出す事にした。「それで何か分かったか?」「ああ、ショートカットの君の事? まだや」「ああ? 何にもか?」「そやかて、まだ何日も経ってないやろ。兄貴が言うて来たん、あれ、一昨日の夜やで? 兄貴、珈琲飲む?」「飲む」 俺はあのひとのハンカチを出す。本当ならクリーニングに出すべきなんだが。あのひとの唯一の手掛かりを俺はまだ手放せずにいた。桃の香りが薄れかけてる。またあのひとの声や顔、綺麗な足が浮かぶ。(嗚呼、貴女はどこの誰なんですか?) あれからしょっちゅう脳裏にあのひとが浮かぶ。そして思い出すと何となくせつない。「はい、珈琲。何、ハンカチ握りしめてんの?」「握りしめてなどいない」「今、ため息つきながら握りしめてたやん。あ、もしかしてそれ、ショートカットの君の?」「そうだ。これを返さねばいけんのや」「そうなんや。ちょい見して。顔、覚えてへんの?」「覚えてる」「なら描いてみて。ダメ元でなんや分かるかも知れへん」「ああ」 あのひとの似顔絵を描いていると、愚弟がハンカチの香りを嗅いで首を傾げた。「なんや?」「なあ、兄貴。この香り、その彼女からしたん?」「そうや。それが何だ?」「この香り、覚えがあるような」「何?」「チビの香りに似てる気ぃするんやけど」「チビ?」「そう言うたら、チビもショートカットやな」 言いながら愚弟がハンカチを広げた。「あ、これは」 俺は広げなかったから気が付かなかったが中にくまさんと名前の刺繍があった。それを見て愚弟が驚いている。「このくまさん、チビのや。それになまえて、間違いないわ」「なんや、知り合いか?」「ああ、うちのエンジェルちゃんや」「なんやそのエンジェルちゃん言うんは」「エンジェルちゃんみたいに可愛らしいから、たまにやけどな、俺が勝手にそう呼んだりしてんのや。うちの捜査室の仲間や。俺の元相棒」「はあ? ほんなら、刑事か?」「そうや」「ずいぶんと小柄な子ぉ、やったで?」「そうやな。でも、優秀な子ぉやで。優しーしな、ええ子やで」
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