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● ○ ● ○ ホテルに入る手前で、彼と一旦別れた。BARに行く途中で見かけたお花屋さんで、薔薇の花を一本買った。 今夜の記念に彼にあげたかった。花束では持って歩くのに邪魔になったり恥ずかしかったりするかも知れないけど、一本ならあのカッコいいスーツの胸ポケットに挿しても、彼なら似合いそうだと思った。 そして、なにより花言葉が彼に贈るのにぴったりだったから。(彼は博識だから、一本の赤い薔薇の花言葉をちゃんと知っていて喜んでくれるかも) そう思うとなんだかウキウキして、足どりが弾んだ。 別れたばかりなのに、もう彼に会いたくなった。彼は、BARでナンパして来る筈。された事はあっても、彼には自分からナンパした経験はないらしい。彼曰く『初体験だけどなまえがもう一度オレに惚れるくらい、頑張る』って。(ふふ。楽しみ) 一階でリーフレットをもらい見たホテルのBARは、いつものマスターのお店とも違う雰囲気でちょっと緊張して来る。(でも──。今夜、僕は大人の女になるんだ。昴に似合う、そんな女でいたい。彼みたいなイイ男に口説かれるに相応しい、セクシーで魅力的なイイ女。指の先まで意識して、それこそ彼を虜にしちゃうくらいの気持ちで楽しむの) そんな事を考えながら上階にあるBARに行く為、エレベーターに向かった。そこで、酔っ払いらしきおじさんにつかまってしまった。酒臭い息をしながら迫るおじさん。 職業柄酔っ払いには慣れてる。ここまで酔ってると話が通じなさそうだ。とりあえずなだめてみる事にした。 案の定話は通じず、おじさんは腕を掴んで来た。(これは、長くなりそう。でも早くしないと彼が来ちゃう。楽しい夜が台無しになり兼ねないな。さて、どうしよう) 間の悪い展開に、ため息が出そうになった時──。「止さないか。お嬢さんが困っているだろう」 通りがかった長身の男性が、僕を掴むおじさんの手を引き剥がし払った。そして僕を庇うように間に立つと、近くの従業員を呼び止め『君、警備員を』と言った。それを聞いて酔っ払いのおじさんが、怒りわめきながら手をぶん回した。運が悪い事にそれが男性の顔に直撃してしまった。 やって来た警備員がおじさんを連れて行くみたいだったので、そっちは任せる事にした。 長身の男性の口元が切れ、血が出てた。廊下にある椅子に掛けてもらいハンカチで血を拭いた。「あ、君。ハンカチに血が付きますよ」「良いんです。それより、痛みますか? 私の為にすみません」「いえ、これくらい大した事はありません」 バックに今日買った塗り薬が、入ってるのを思い出した。「あの、これよく効くんです。唇にも使えるので。ちょっとつけて良いですか? あ、今日買った新品なので、綺麗ですから」「あ、すみません。お願いします」 痛くないようにそっと塗って、絆創膏を貼った。「これ、よろしかったらどうぞ」 男性に薬を渡し後でお礼をと、名前を聞いたが『そこまで大層な事はしてないので気にしないでくれ』と男性は立ち上がり背を向けて歩き出した。 呼び止めるのも躊躇われその場で『ありがとうございました』と頭を下げ見送った。 それから僕はBARに行く為、エレベーターに向かった。
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