彼女と出会えて本当に良かった。そう思うといろんな人に感謝の念が湧いて来る。父さんや母さん、トメや屋敷の連中、楓さん、それから、
なまえのお祖母さん、チビの
なまえを助けてくれた
阿久津さん達や秋月家の人達。仲間達……彼女は嫌がるかも知れないが、彼女の両親。確かに親として、ひでーえ人達だとオレも思う。でも、彼女が生まれて来てくれたから、こうして出会えた。そう考えると、とにかく彼女をこの世に生んでくれてありがとうと、思わずにはいられない。
そして、何より一番にありがとう伝えたいのは、やっぱり彼女にだ。オレが想像もつかないようなツラい思いだってして来てる筈だ。それでも、このチビっこいナリで懸命に頑張って来てくれた。だから今がある。
こないだも思ったけど……二度目の結婚式の今日も思った。
(オレの幸せはお前がいなきゃ成り立たねー。オレ達、二人で一緒に幸せになろうな。だってさ、お前の事だから[オレが幸せにしてやるから。守ってやるから、黙って守られてろ]なんて言っても[何、言ってんだ。僕こそお前を守ってやるよ。任せとけ。だいたい僕を誰だと思ってる。そこら辺のやわな姉ちゃん達とは違うんだぜ]とか、勝ち気な顔で言いそうだよな。ふふ……オレの女房はじゃじゃ馬のおてんば娘だからな。一筋縄じゃ行きゃあしねー。オレ達にピッタリの形は、二人で協力して一緒に何でも乗り越えて、守り合い一緒に幸せ積んで行く形。そうだろ? 相棒)
そう胸の中で語りかけ寝顔を眺めながら、頭をそっと撫でる。
(そう言えばさっき自画自賛だったな。いっつも自分の価値をバーゲンセールみてーに低く評価すんのに、珍しい。ふふ……後でオレも大絶賛して褒めてやろ。それとこの可愛い命の恩人に、お礼のご褒美をやんねーとな。何か、大喜びするもんが良いな。うーんと喜ぶ事で、
なまえの笑顔が沢山見られる事──)
と、ドアがノックされて思考が中断した。彼女を起こさぬように返事をすると、室長がこそーっと『ちょっと良い?』と顔を覗かせた。石神も一緒だった。
「あら、チビ助寝ちゃったの? あのね、例の黒服、*ガラ割れしたわよ」
「早かったですね」
「アンタ達が着替えてる間に石神さんと行って来たのよ。単独かどうかも気になったしねぇ」
(この二人なら直ぐに落ちただろうな)
「あのホールスタッフ。例の*ヘビ女、元警視の弟だったわ」
「えっ?!」
室長の言葉に思わず声が出た。
「ヘビ女も、母親や弟には良い娘、良い姉だったらしいわ」
*ガラ割れ:身元が判明すること
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24。 のネタ
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