「きっと、きっとね。ダーリンのツキが味方して守ってくれたんだよ。ダーリンー……んーっ」
途中から段々と興奮気味にバァーと捲し立てて、そのままオレに口づけた。
オレも後ろの連中も、その場にいた皆が呆気にとられ固まった。
口紅がオレに赤く残る程に熱烈なキスをした後で、彼女はオレにぎゅーっと抱き付いて叫んだ。
「あー無事で良かったーっ! 一番大事なもん、守ったーぞぉー! えらーいぞー! 僕ぅー! あはは……よくやったよ、ね?」
興奮して自画自賛で叫ぶ彼女を腕に抱き、赤い口紅がついたマヌケな顔で目を瞬かせるオレに、彼女が同意を求める。
徐々に呆然とした頭から覚めて、最初にオレの頭に浮かんだことは……。
(スゲー女だ。とびきりだ。やっぱりこいつには敵わねー)
その時にはもう、周りの事なんか消え失せた。目の前の彼女が心を占めた。やっぱりオレも興奮しているらしい。何だか妙に可笑しくなって『ふふ……』と笑いが込み上げる。オレは彼女を身体の上に抱え、後ろの芝生に寝転がった。そのままひとしきり二人で笑った。
腕を伸ばし彼女を上にちょっと持ち上げると、顔が見えた。
今、襲われたとは思えない満面の笑顔で『えへへ』と彼女は笑ってた。
「なまえ、お前って最高ーだ!」
「だろ? ふふ。僕はダーリン専属のSPだからなー。守るのは、とーぜんだ! 言ったろ? ダーリンは、僕が守るって。僕は、大事な事では絶対に嘘はつかないからなー。どうだ? 優秀だったろ? えへへ。今回の報酬は、高くつくぞー? 言っとくけど、マケねーぞ。覚悟しろ? あ、約束通り、報酬は愛だけだから、な? 他のもんはNG。お断りだ。ダーリンの愛で、きっちり払えよ? あっはは……」
「ああ。オレの一生掛けてきっちり払ってやるよ」
「それじゃー、僕も一生守ってやるよぉ。ダーリンは僕の、この世で一番に大事なもんだかんなー。ふふ」
「おーそうか。それはそれは。フフッ。お前は、本当に。怖いもん無しだな。お前位だぞ? このオレに、そんな事言うの。なぁ、知ってるか? これでもオレは優秀なエリートSPだったんだぞ?」
「えへへ。知ってるよぉー。けどな、どんなスペシャルなヤツだって僕には敵わねーぞ。事、ダーリンを守るに関しちゃ僕よりスゲー奴なんかいないのっ! 僕の愛情に、勝てる奴なんかいる訳ねーじゃんよ。ふふ。参ったか。えへへ」
「ああ、参った。完敗だ。ふふふ……さすがのオレも、お前には勝てねーよ。あははは……」
端から見たら、抱き合って笑うバカップルにしか見えねーだろうが、そん時はお互いが生きてる事が嬉しくて、ぬくもりが幸せで仕方なかったんだ。
「はーい。バカップル夫婦、そろそろ良いかしら? アホの子二号の背中の物騒なもん、抜きたいんだけど?」
フッと笑った後で、パンパンと手を叩き室長が言う。藤守や小野瀬さん達も来て彼女とオレを引き起こし、ビニール袋を使いながら指紋を消さないように凶器を回収し、ケガがないか確認した。
その時になって王子達が戻って来た。ロベルト王子が、ヨロッと着崩れた彼女にハグしながら『すごい! 感動したよ。やっぱり君たちしかいないよ。絶対、イエスって言ってね!』と言い残し、松永さん達SPに促され行ってしまった。
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