「あの映画のヒロインは、確かにコールガールですけど。お話的にはシンデレラストーリーよ? 主人公の女の子が、お金持ちの殿方に見そめられる所から始まるの。殿方は、女の子に彼女が知らないセレブな世界を教えて行く。まだ本当の輝きを放ってない原石の女の子を、自分好みのレディに磨き上げるのよ。ファッションやマナー、色んな事を教えて行く内に、段々と二人は身分とか関係なく惹かれ合ってく。女の子はどんどん綺麗に磨かれて……美しいレディに変身するの! 恋愛の方も、最後にはちゃんーと殿方が迎えに来て結ばれる、ハッピーエンドの、愛のあるストーリーなのよ?」
「ああ、そうなの? びっくりした」
「ロベルト王子、マイフェアレディはご存知ですか?」
「ああ、オードリー・ヘプバーンの昔の映画? それなら、シンシアに付き合って観た事あるけど。それが何? エドちん」
「プリティウーマンはそのマイフェアレディの現代版と言われてるんですよ。マイフェアレディのヒロインは花売りでしたが、プリティウーマンでは時代を反映してコールガールとして描かれていました」
「ああ、そうなんだー。だけど俺のなまえちゃんのイメージはちょっと違うなあ。……最近映画は観てないから、ちょっと古いけどさ[キル・ビル]とか[ニキータ]とか、かなあ。あ、ニキータのハリウッド版のさ[アサシン]なんて良いかも。あの映画のブリジット・フォンダちゃんが、にっこり笑うと愛くるしくてキュートなのにさ、いざ銃を持つと美しい野獣に変わるんだよねぇ」
「要は闘う女のイメージなんですね」
「そうそう、グレたん! 闘うキュートなヒロインって感じなんだよね」
「それは、俺達がなまえに守ってもらった影響が大きいですね」
「ああ、キーちゃん、そうだよね。俺達、二回も守ってもらったしねえ」
「あの時の話を後からプリンセスに聞きましたが、感心な程勇敢だったようですよ」
「そうなの? グレたん。プリンセスそう言ってたんだ……」
「初めはこんなに小さく可憐なお嬢さんがと信じられませんでしたが。きちんと守って下さいました」
王子達がうんうんと頷き、オレと彼女に言った。
「昴たん、なまえちゃん、これからよろしくね」
「王子様、これから? なあ、これからってなんや?」
藤守に聞かれたがオレも彼女も室長も……そこにいる警察関係者の誰一人、何も聞かされてなくて首を傾げた。
オレからも尋ねようとした所で、ロベルト王子はアルさんに釘を刺された。
「ロベルト様。順序を無視しては、なりません。日本には日本の都合もあるでしょう。その件は今、私共よりお伝えするべきではございません」
そう言われては、それ以上は踏み込めなかった。
その件については後日、日を改めて室長とオレと彼女が、警視総監である父さんに呼ばれて詳細を聞く事になったのだが。その時は、まだ話はそれで終わってしまった。
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