「なまえ、アンタに似た方が良いだろう。ローズマリーに似たら悲惨だ」
「何だと?」
「ちょっと、ダーリン。誠二兄ちゃんとじゃれないの! 今日は、ダーリンはね、僕を見てればいーの。僕がダーリンを一人占めするのっ」
後藤に向いてたオレの両頬を持ち『分かった?』と自分の方へと向けさせる彼女。
『あ、ああ』と答えながら、彼女の大胆さにちょっと照れる。
「かあーぁっ、このバカップル夫婦が。またイチャイチャし始めたわー」
「穂積、妬くな、妬くな。さすがにあんな感動的な式の後じゃ、お父さんに勝ち目は無いって」
「本当に良いお式だったわよねぇ。なまえちゃんも綺麗で。一柳さん。貴方、やっぱり筋が良いわ。この仕上がり、プロ並みよ。弟子入りしてもらいたいくらいだわ」
モモちゃんの言葉に女性陣プラス源次郎が、驚き彼女に近寄りしげしげと眺める。
「えー! もしかしてこれ、昴さんがメイクしたの?」
「結菜姉、それだけじゃありませんよ」
「え? 国ちゃん。何、何?」
「ミイコから聞いたんですが、なまえさんをご自分の手で誰よりも綺麗にして差し上げたいと、アニさんはお忙しい中レッスンにまで通われて着付けから何から全てご自分でなさったそうですよ」
「うわー。すごーい」
女性陣プラス源次郎が騒ぐ。
「いやー本当ですよ。自分、マジで感動いたしました」
「おい、国枝。バラすなよ」
忙しくて、事前に口止めするのをうっかり失念していた。国枝の言うのは事実、そうなんだが……バラされると恥ずかしい。
「良いじゃなーい。昴ちゃん。ステキよー。愛ねぇ。ベイビーちゃんへの愛を感じるわぁ。素晴らしいわ。ベイビーちゃんも、愛されてこうやってどんどん美しくなるのねぇ」
「そうなのよね。愛は女を綺麗にするわよね。こういう仕事をしてると、つくづく思うわよ。恋してる娘は、全然違うのよねぇ。なまえちゃんも、成人式の時より綺麗になったもの!」
「分かるわぁ。私もお洋服、売ってて[あら、このお客さま綺麗になったわ]って思う時があってね。お話聞くと恋愛中だったりするのよぉ」
またモモちゃんと、源次郎が盛り上がり始めた。
「医学的にも、恋をすると【キレイホルモン】とも呼ばれる[エストロゲン]の分泌が活性化するからねぇ。肌のキメが整ったり、バストアップしたりするって言うわね」
「え? バストアップ? 裕子さんそれ、本当っ?」
彼女がいち早く反応した。頷く阿久津先生を見てから、自分の胸を眺めちょっとがっかり声を出した。
「その割にはぁ、変わらない気がするぅ。何でぇ? 僕、男みたいだから? そのエストロゲンがあんまり出ないのかなぁ。ねぇ? 裕子さん、何でぇ?」
「プッ、あはは。何だよ。そんな顔してえ。チビ助は、乳ネタだと目の色が変わるよなあ。本当、お前の乳コンプレックスは直らねえなー。わはっはは」
「うーだってぇ。もう笑うな! お父さんに、乙女のこの切実な気持ちなんか分かるもんかぁ」
彼女が拗ねた。
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