彼女は、明智夫妻が用がある時によくベビーシッターを引き受けてる。それ以外でも、オレ達は暇な時にも二人で顔を出しくるみと遊んでいる。なのでくるみは、彼女と仲良しだ。両親とじいちゃんばあちゃんの次に大好きなのが彼女らしい。くるみ曰く、彼女が一番。で、オレが二番。その後に捜査室のメンバーが続くんだそうだ。
オレはくるみの気を、他に引き付けるべく話し掛ける。
「なあ、くるみ。こっちから見てごらん。なまえちゃん、綺麗だろうー? ん?」
「ん、きれーねー」
「なー? お嫁さんだ」
「およめさん?」
「そ、お嫁さん。なまえちゃんは、今日はお嫁さんだから白いの着ておめかししたんだ」
「ふぅーん。くるみもおよめさん、するぅー」
「くるみも? お嫁さんしたいのか?」
「うんっ! パパーっ! しろいのつくってー」
今度は明智さんに向かい手を伸ばし、移って行った。
「え? 白いのって着物の事か?」
明智さんがくるみに聞くと『うんっ!』と無邪気に頷く。自分達の元に、戻って来た愛娘に翼さんが言う。
「いくらパパでも、これは大変だよ。くるみー」
「作れない事もないだろうが……」
「えー明智さん、着物ですよー? 着物。洋服じゃないんですよ?」
如月が驚く。明智さんが真剣に答える。
「いや、どうしても着たいなら作れるぞ。作れるが、花嫁衣装はなぁ」
どうやら明智さんは、くるみに花嫁衣装を着せたくないようだ。
「雅臣さん、着物は着せるの大変だから止めた方が良いわよ。ねぇくるみ、エルサみたいなのにしたら?」
悩む明智さんに翼さんが、とても現実的な事を言い出した。そこへ結菜がマイペースに聞く。
「エルサってアナ雪ですか?」
「うん。雅臣さん、作るならそっちにして。着せるの楽だし。多分、この子、お家帰ってアナ雪のブルーレイ見たら、また『くるみもエルサしたーい』って言い出すから」
「なんや、くるみ姫もアナ雪好きなん?」
藤守がくるみに聞くと元気に頷く。翼さんが言った。
「そうなのよ。毎日、見てるわよ」
「へぇー今時なんやねぇ」
「そうか、ドレスのが確かに楽だな。くるみ、エルサのドレスでも良いか? 好きだろう? エルサ」
「エルサ? うんっ。すっきー!」
返事をしてくるみが、思い出したように『ありのままのぉ~♪ すがたみせるのよぉ~♪ ありのままのぉ~♪』と手振りをしながら、歌い出した。大人達が笑う。
日本の流行りまで把握してない、王子とアルさん達はイマイチ飲み込めない様子で眺めてる。それを見た桂木さんが説明してやる。
さっきから見てると誰かが困ってると、誰かがフォローし、うまい具合に自然と協力し合って和気あいあいとした雰囲気になっているようだった。
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