『貴女、凄いわね』『何で隠してたの?』『あの王子達と知り合いなんて。さすが昴さんが選んだ方ねぇ』『そうよねぇ、一柳の次期当主の嫁ですもの。やっぱりその位でなければねぇ』『でも安心したわ。貴女、ちっとも言わないんですもの。ねぇ?』『ええ、奥ゆかしい方なのね。貴女って』
ペチャクチャ好き勝手に、そんなような事を口々に言い出した。
彼女はどう返したら良いのか分からず、ちょっと引きつり気味な笑顔で頑張っている。
(こいつ等は……。今まで散々けなしてたくせに、ころっと態度を変えやがって。うるせーし、うんざりだ)
楓さんが、いつまでも騒ぐ叔母達に『さあ、いつまでも邪魔しても悪いわ。行きましょう』と追い立てて追い払った。
(もしかして、うんざりしてんのが顔に出たか?)
叔母達が行ってしまうのを見届けてから、楓さんはくるりとこちらを振り向き彼女に謝る。
「なまえさん、うるさくてごめんなさいね。本当に困ったものだわ。貴女が、一柳をイヤにならないと良いんだけど……私がちょっと甘やかし過ぎたかしら」
ため息交じりに言う楓さんに、彼女はにこりと笑顔を見せる。
「イヤになんてなりませんよ。楓さん。今度、明星(あきお)さんと、それからお義父さんと皆さんで、ご飯でも食べに寄って下さい」
そう誘い、楓さんを喜ばせた。『またね』と笑顔で離れて行く楓さんを見ながら、彼女に申し訳なくて謝った。
「すまねーな。厄介な親戚ばっかで。結婚早々気ばっかり使わせて」
「んー? 全然。ふふふ……あら、花婿さん? そんな顔しないの。イケメンが台無しよ? ほら、笑って?」
あの時と変わらない誘うような笑顔で、オレに微笑む。
フッと頬をゆるめる。
「……やっぱり、この笑顔にやられたんだな。オレ」
「ん?」
「あの時、同じ事言って笑ったろ? ほら、最初に捜査に行った時だよ」
「ああ、そう言えばそうだねぇ。あの時昴ってば、超怖ーい顔してたんだもん。イケメンがもったいないって思ったんだぁ。ふふ……」
「ん、あの時のお前の笑顔に惚れたんだ。オレ」
彼女は『え……』っと言った後で瞳をくりくりと動かし何やら考えて、またオレに視線を戻し……。
「でもぉあれ、最初だよ? 出会って直ぐ……」
「うん。ほとんど一目惚れって事、かな?」
言ってて恥ずかしくなって来て顔が熱を持って来る。
「えへへ……一目惚れか♪」
「嬉しそうだな。奥さん」
「嬉しいもん。じゃあ、僕もぶっちゃけるぅ。あの時ね、僕も君の笑顔が見たいなって思っててさ。で、笑った君の笑顔にちょっとドキッとしたんだ。それでもっと、もっと、君の笑顔見たいと思ったの。だからね、僕もあの時、君の笑顔に恋したのかも。えへへ。言っちゃったー。恥ずかしーぃ」
嬉しい事をぶっちゃけて、彼女は化粧で白い筈の顔をポッと染めた。
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