ハッとして周りを見ると、他のヤツ等も見惚れてた。
(危険だ。ここにいたら、また……。これ以上触らせてたまるかーっ!)
オレは彼女をヒョイっとお姫さま抱っこすると慌ててその場から離れた。後ろで野郎共のブーイングが聞こえた。
● ○ ● ○
総理と何やら話し込んでた父さんが彼女を抱いて来たオレに驚く。
「昴、どうしたんだい?」
「失礼しました。急いでたもので」
彼女を下ろすと恥ずかしそうに、真っ赤になって消え入りそうな声で『失礼しました。すみません』ぺこぺこと頭を下げて謝る。
「お前、あんまりぺこぺこするとかつらとれるよ」
彼女を止める。そんなオレに父さんが、ちょっと呆れ気味に、たしなめるように名を呼ぶ。それを総理が取り成してくれた。
「いやいや、仲が良くてなりよりだよ。ところでそんな仲が良い二人に、折り入ってお願いがあるんだがね──」
話しを聞いてみると、王子達が日本の挙式が見たいと希望してるので、今日これから式を挙げて欲しいと言う。
「実は、あちらの執事さんの話しに寄ると、もう準備は大方済んでしまってるらしいんだ」
父さんのその言葉に、さっきの光景が浮かびその話しをしていたのかと納得する。
「ああ、サンサンってやっぱりこれの事だぁ!」
彼女が叫び『ん?』と見るオレに言った。
「ほら、王子達がさっきサンサンが楽しみって。三三九度の事だったんだね」
「ああ、そうだな」
総理に続き父さんにまで頼まれて、しかも王子達は、もう楽しみにしている。
そうなれば、オレ達は式を挙げる他に選択肢はなった。
予定を変更し写真撮影を後にして、オレ達は式の準備についた。
● ○ ● ○
巫女さんの格好をしたスタッフから式の流れや手順を教わる。
彼女は緊張で顔を強張らせながらも必死で聞いてた。
「それでは、もう暫くお待ち下さい。支度が整いましたら、また参りますので」
スタッフが行ってしまうと彼女は、メモを見ながらぶつぶつと呟き、さっき聞いた手順を覚えようと頑張っている。
(頑張ってるな。いざという時の為にオレがしっかり頭に入れとかねーとな)
オレもメモを見て、集中して頭に叩き込む。
(よし、だいたい覚えた。急だったが、何とかなるだろ)
そう思ってると切羽詰まったような彼女の声がオレの名を呼んだ。
「す、昴ぅ……。どうしよう。やり方が頭に入って来ないよぉ。あぁ……これじゃ、ドジるよ。昴に恥をかかせちゃうーぅ。覚えなきゃ。あぁ、早くしないと時間が。うぅ、どうしてこう僕はバカなのぉ!」
(マズい、焦り過ぎてパニック起こし掛けてる)
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