「サンサンって?」
呟くように訊ねるが、ロベルト王子は、話し掛けて来た他の王子と何やら盛り上がり始めた。何だかとても自由な王子達だった。
意味が分からない彼女は、オレや周りに少し声を落とし訊ねる。
「ねぇ、サンサンって何? 何の事?」
みんなが『サンサン……』と呟き、考える。
「白無垢でサンサン……三三九度の事でじゃないでしょうか?」
真壁の発言に『ああ』とみんなが頷く。それに彼女が『でもぉ』と不思議そうな顔をした。
「連想すると確かにそれっぽいけどさ、でもおかしいよ? 今日はさ、写真撮影しかしないよ? 三三九度って式だよねぇ。王子達、何か勘違いしてんのかなぁー。どっからそういう発想したのかねえ?」
彼女が小首を傾げた。
「なまえちゃん」
話しをしていたロベルト王子が、ふいに話しの途中で彼女の名を口にした。
呼ばれた彼女は『はい?』と答えて何だろうという感じで、ちょっときょとんとした。
次の瞬間、ロベルト王子がとてもスマートに彼女にスッと近付いた。
不自然さが微塵も無くあまりにも自然で尚且、優雅なその動作に皆がただ眺めてしまった。
「君の不思議そうな顔や、そのきょとんとした表情。とてもキュートだ」
ロベルト王子は、そう見つめながら言って彼女の頬にキスをした。
予想外のロベルト王子の行動に、皆でギョッとし固まった。彼女は唖然とした後で、ボンッという勢いで真っ赤になった。
そこへ小野瀬さん達がやって来た。よく言えば気さくに、悪く言えば能天気そうに、聞こえる声でみんなに呼び掛ける。
「やあ、皆さんお揃いで。おやおや、おチビちゃん、真っ赤かでどうしたの?」
一連の事情を全く知らない筈の小野瀬さんが、まるで盗み見ていたかのような行動をした。
小野瀬さんは、さっきのエドワード王子と同じように指で彼女の頬を撫でた。彼女がビクッと驚く。
(って心配してるそばから! あっ、ああ、オレのなまえに野獣どもがわらわらと。危ねー。ここは、危な過ぎる!)
「そ、そうだ! 総理に呼ばれてたんだ。行くぞ!」
急いで危険地帯から引き離すべく、彼女の手を取り引くと『あっ、待って』と彼女がよろける。慌てて抱き止める。
「ごめん、着物だったな」
「ううん、大丈夫……」
彼女がいつもと違う、しとやか気味な微笑みでオレに言う。
いつも元気な彼女の、その控え目な笑顔は何だか妙に新鮮だった。エドワード王子じゃねーが、可憐で可愛くて目を奪われた。オレが見惚れていると、彼女は照れたのかポッと頬を赤らめた。
「お前、可愛い過ぎ」
ポロっと本音が口をつく。その言葉に男共が『本当に……』と続いた。
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