そんな事を思っている内に、他のヤツ等も寄って来た。
「なまえちゃーん」
抱きつこうとしたそらを容赦なくパシッと叩いて止める。
『痛!』と声を上げるそらの後ろから、如月がヒョイと顔を覗かせる。
「やあチビ、綺麗だなー。あ、室長ここにいたんですかー。どこ行ったかと思いましたよ。あっ……」
そこで王子達の存在に気付き、緊張気味に頭を下げる如月。その後から、黒澤がにこにこしながらやって来る。
「なまえさん、貴女の黒澤。ここに参上致しましたー。あ、王子様方ではないですか。お久しぶりです」
「黒澤、慎みなさい。失礼だぞ」
王子相手とは思えないフランクな黒澤を、石神がたしなめる。
するとロベルト王子が笑顔で言った。
「良いの、良いの。秀ぽん。今日は固い事抜きで──」
「ひ、秀ぽ、ぽん……?!」
ロベルト王子の呼び方に、石神本人とそこにいた連中から思わずという風な声が漏れる。
みんなの驚く声にロベルト王子は、キョロキョロとした後で石神に視線を移し口を開いた。
「あれー? 君って、確か石神……秀樹って名前じゃなかった? 俺、間違えた?」
「いえ……あってます」
石神が眼鏡を押さえながら言う。まさか、王子相手に文句を言うわけにも行かないだろう。冷静になろうとしているが、若干顔が引きつっている。
それに気が付かないのか、知らぬふりをしているのか、ロベルト王子が笑顔で言った。
「じゃあ、秀ぽんで良いよね? 俺達、日本に知り合いが少ないんだよね。友人はまだ昴たんとなまえちゃん位なの。だからみんなも仲良くしてくれると嬉しいんだけど。これから日本来る機会も増えるしね。そういう事で、秀ぽんもみんなもよろしく」
そこまで言われてはイヤとも言えず石神は『はあ……』と了承とも、ため息とも、取れる曖昧な返事をした。
みんな、どういう反応をしたものかとちょっと困っていると、彼女がクスクスっと笑い出した。
「ふふっ。プライベートって事で、特別に。良いよね? 秀樹兄ちゃん」
彼女がパチンとウィンクしながら取り成すように言うと、負けたとでも言いた気に石神が頭を振った。
「貴女という人は……」
「そうそう、プライベート。俺達、今日はさ昴たんと、なまえちゃんの友人としてお祝いしたいんだよね」
「……ところで、日本では婚礼の時は、こういう民族衣装を着るのか?」
キース王子が珍しそうに聞くのに、桂木さんが説明する。
「これはなまえのサンサンも楽しみだな」
ジョシュア王子が彼女を見ながらひとり頷く。
「え? サンサンって、何ですか?」
彼女が聞き返すがロベルト王子が、被せるように言った。
「本当だよね。これならきっと綺麗だろうな。前に資料で見た日本のお人形みたいだよ」
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