取り急ぎ、まだ抱き付いてるロベルト王子を何とかしなくては。
これが、そらや如月なら[オレのなまえに何をする!]と頭でも叩く所だ。でも、まさかロベルト王子にそれをするワケにも行かない。
「王子、ハグは勘弁して下さい」
オレは引きつりそうな顔に無理矢理、微笑みを貼り付けて言った。オレにしては、かなり堪えてやんわりと制したつもり。『えー』と疑問そうなロベルト王子から彼女を何気なく引き離し、そっとこちらに引き寄せた。
ジョシュア王子が横から言った。
「そうだ……。確か、日本の大和撫子はそういう事はしないんだ。本で読んだ」
「ヤマトナデシコ? ジョシュぽん。そのヤマトナデシコって何?」
「おいロベルト王子、変な呼び方をするな。大和撫子とはなまえのような日本女性の事だ。そうであろう? なまえ」
「え?」
急にふられて彼女は、答えに窮する。まさか自分でそうだとも言えないだろう。
(大和撫子か、また大層なもんが出て来たな。さて、外国の方達にはどう説明するのが良いかな?)
一瞬考えてる隙にロベルト王子がまた聞いた。
「なまえちゃんのような? 日本の可愛い女の子って事?」
「え? 僕のような? それはぁ、違うかなぁ……。んー。大和撫子かぁ。可愛いとは、ちょっと違うんですよね……。えーと、何て説明すれば良いかな……えーとぉ」
彼女が困ってると、助け船の声がした。
「大和撫子とは、品があり清楚な美しさを持ち、しとやかでいて芯の通っている日本女性の事です」
「石神」
見れば、桂木さんと石神、室長がやって来た。王子達に挨拶に来たようだ。
『なるほど』と納得する王子達に、鬼軍曹殿達が挨拶を済ませる。
室長が、彼女の脇に来て『お前は大和撫子と言うには、じゃじゃ馬過ぎだよな』と笑いながらからかうと、彼女がぷぅと膨れた。室長はその反応を満足そうに楽しみ、ニヤりとした後で『おい、チビ助。白無垢でタコみたいに膨れるのは、マズイだろう』と、またからかった。彼女は『ハッ』として真っ赤かになった。
すると、その彼女の赤くなった頬をエドワード王子が、スーゥと長い指で撫でた。
「芯の通った美しさというのがヤマトナデシコであれば、私はなまえさんにピッタリだと思います。でも、膨れたり顔を赤らめる貴女も、可憐で美しいですね」
ドキマギした様子でますます彼女が赤くなる。
「うわぁ、なまえちゃん可愛い!」
(マズイ。ロブたんの言う通り。その格好でそれは、可愛い過ぎだ)
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