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「あーあ、今までは自分が姐さんのファッション担当だったのに。すっかりアニさんにとられちゃって……つまんねーの」
「あら、この子、ヤキモチ妬いちゃって。本当ミイコは、なまえちゃんが好きねぇ。たまにやらせてもらえば良いじゃないよ。なまえちゃんなら、さっぱりしてるしイヤだとは言わないでしょう? あ、それともご主人の貴方がイヤ、とか?」
モモちゃんとミイコの視線に笑いながら答える。
「いえ、別に。イヤとか無いですよ。ただこういう記念の時は、オレが綺麗にしてやりたいですが」
「え? じゃあ普段は? 今まで通りでも良いんッスか?」
「ああ、なまえが良ければな。ただ、あんまりド派手な髪型は仕事柄ダメだけどな」
そういうと『ウッス!』と嬉しそうなミイコにモモちゃんと一緒に笑ってしまった。
「さあ、着付けは前回迄で終わったわね。今日は次、行くわよ? 白無垢の時のメイクなんだけど──」
数回のレッスンが終わる頃モモちゃんに『筋が良い』と褒められた。モモちゃんも今日、招待したので後でミイコと来てくれる筈だ。
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「なまえ、出来たぞ」
白無垢に綿帽子姿の彼女は、本当に綺麗だった。出来るなら、このまま飾ってずっと眺めていたい。
「我ながら、最高の出来……。なまえ、とっても綺麗だよ」
『ありがとう』と彼女がいつもよりちょっとしとやかに微笑む。
「本当に、お綺麗な花嫁さんですねぇ。お人形みたいだわ。よくお似合いですよ」
係の人に言われてはにかみ、うっすらと頬を染めた姿が奥ゆかしくも愛らしい。
(ヤベーな。これは。気をつけねーと、顔がゆるみっぱなしになりそうだ……)
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今日は晴れているので、庭園の方で写真を撮る事になっている。ここの庭園は評判が良く、そこで記念写真を撮るカップルが多いらしい。オレも支度を済まし、彼女をエスコートしながら庭園へと向かう。庭園には既に、招待した連中が来ていた。結局、今日も先日の結婚式並みに大勢集まってくれている。オレ達が姿を見せるとみんなから『来た、来た』と待ち兼ねたような声が上がった。二人の友人達や、いつもの連中をはじめ、正月で帰国していた秋月夫妻や、楓さん、父さん、阿久津さん達……みんなに、二人で挨拶をして行く。
と、そこで反対側の出入口がザワザワとざわついた。何かと思い皆の視線がそちらに向く。遠くてハッキリしないが、SPらしき連中を伴い、人群れがこちらにやって来た。よく見るとSPは松永班のメンバーみたいだ。それと総理と誰か、らしかった。
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