「いいよ。余裕なくても一生懸命、オレの誕生日の用意して祝ってくれたただけで十分だ。嬉しかった。ありがとうな」
「んー本当? じゃー、ご褒美にぎゅってして?」
愛しいひとからの、上目遣いのおねだりを断れるワケがない。彼女を腕の中に包み込む。
「姫、結婚式楽しもうな。一緒なら、きっと大丈夫だよ」
「ん。……昴、大好き」
「オレも……」
彼女がオレを見上げて『ふふっ』と嬉しそうな顔で笑う。可愛くて、ちゅっと口づける。口づけたら、今度は愛しさが胸に広がって、ずっとこのまま腕の中におさめて置きたくなった。
「姫、少し早いけど行くか。このままだと止まらなくなりそうだ。結婚式に二人して遅刻するワケにはいかねーだろ?」
そう言うと彼女は焦った顔をして『うん』と頷いたっけ。
それからの時間は本当に、幸せだった。
室長にエスコートされバージンロードを歩いて来る彼女は、ずっと見ていたくなる程、愛らしく誰より美しかった。
(教会での挙式、ちょっと感動したんだよなー……)
その後の披露宴ではみんなから祝福されて、笑ったり照れたり感激したり。でっかいスプーンのファーストバイトも楽しかった。途中、彼女もオレもお色直しを数回した。警察官達が結婚式で着る制服に着替えた時などは一人で中座した。彼女が楽しみにしていたやつだ。彼女はオレの礼服姿を見るなり『格好良い』と一言呟き、暫くぽっーと見惚れていた。本当に焼き付けるように、あんまり見つめるので照れていたら二人の隙をつき、顔を隠した黒ずくめの野郎共が乱入して来た。オレから花嫁を奪略する余興の始まりだ。彼女は何も知らない。呆気に取られたまま、さらわれた。オレはちょっと乱闘するフリを交えながら、彼女を奪い返す。
「大丈夫か? 安心しろ。お前は誰にも渡さねー。オレが一生守ってやる」
そう言うと、ポワンとした顔で目をハートにした彼女。
「ダーリン。格好良すぎ……。もう、本当に大好きーっ!」
興奮気味にオレに抱き付き余興は大成功。会場は大盛上がり。
そして、幼い頃にオレも、彼女も、父さんに肩車をしてもらって写真を撮った事があったんだが。それを使っての思い出演出に彼女が目を潤ませたり、父さん達の目を潤ませる事になった二人からの手紙の演出──オレは嫌だと断ったが、彼女がどうしてもと譲らなかった。でも、読み終えたら何だかスッキリした気分になった。やって良かった──盛りだくさんだった。終わりに皆を送りながら、二人で配ったオレ達の顔写真入りのクッキーと、やはり顔写真パッケージのチロルチョコ、彼女と一緒に作ったアーモンドドラジェもみんなに好評だった。
ギュッと想いの詰まった式と披露宴で、本当に良い時間だったよな。
その後の二次会も予想以上に良かった。披露宴とはまた違う楽しさがあって……。
(必要以上に人と関わるなんて、面倒くせー)
そう思ってたこのオレが、染々と仲間って良いもんだと感じた。
そして、みんなに冷やかされつつ『楽しんで来い』と見送られパリへ新婚旅行に行ったんだ。彼女は初めての海外を、のびのびと心から楽しんで色んな表情を見せた。
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