今朝の彼女は早くも緊張してるようだった。朝のあいさつをしてみれば、笑顔がぎこちない。オレはそんな彼女に、クスッと笑い強張った頬を両手で包んで優しくマッサージして解してやった。
今日一月三日は結婚式で着られなかった白無垢を着て、写真撮影を予定していた。その後で新年会を兼ねた祝いの食事会を予定し、みんなも招待した。
最初は[仲の良い連中だけ]と思ってたんだが、父さんが彼女の白無垢姿を見たがった。父さんだけなら良かったが楓さんも来ると言い出し、ならばと他の親戚連中も来る事になり話はどんどん大きくなって行った。
一柳では毎年新年会が行われていたので、オレにとってはいつもの事だが。彼女は親戚にも、新年会にも、まだ慣れてない。
「おはよう。オレの奥さんは、何をそんなにひきつってるんだ? 緊張し過ぎ」
彼女のおでこをチョンとつついた。
(ふふ、デジャブみてー。あの時もこんな調子だったな)
そう思い、結婚式の朝の光景を思い出した。
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結婚式の朝、彼女はかなり緊張してた。かちんこちんに強張り動きはヘンだし、色白と呼ぶには白過ぎる程に顔が白っぽくなり指先も冷たくなってしまっていた。ちょっと心配なくらいの緊張状態だった。オレはなんでも無さげに振る舞いつつも、内心ではなんとかリラックスさせようと必死だった。
緊張し過ぎな原因を、会話しながら探ってみると[ドジって、オレに恥をかかせないか]を心配して[結婚式でドジらないように]と力むあまりの事らしかった。要するに、オレの為だ。なら、尚更リラックスさせてやりたい。
オレが、結婚式を一番に楽しんで欲しいのは彼女だし、主役は彼女に他ならない。彼女のキラキラした最高の笑顔を見たいが為に、結婚式の準備の諸々を頑張ったのだから。スキンシップを取りながら、優しく繰り返し言って聞かせた。
「良いか? あのな、もしもなまえがドジっても必ず、オレが上手くフォローする。大丈夫。オレを信じろ。それにお前はドジなんかしないよ。姫はな、宇宙一の花嫁さんになるんだよ。オレは恥かくどころかきっとみんなに羨ましがられて大変だぞ。ふっ……なぁ、せっかくの結婚式だ。楽しい事を考えろよ。オレの楽しみな事、教えてやろうか? 今日これから式場に行って支度をして、あのみんなで仕上げた可愛くて綺麗なドレスを着て花嫁さんになった姫を見るのが、今から凄く楽しみだ。綺麗だろうなー。お前は? 楽しみ、無いの?」
「あ、ある……す、昴の礼服姿見たい! そ、それがスッゴく楽しみ。け、敬礼してもらって写真と動画をや、山程撮んなきゃ。た、楽しみー!」
緊張から吃りが出てしまい喋り難い口で一生懸命にそう言って、彼女はちょっとワクワクした顔になった。
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