「そういえば、フランス南西部のアキテーヌ地方のSoulac(スラック)という所へ、前に行ったんですよ。建物がカラフルで可愛い街でした。ニース辺りの海岸は灰色の小石の浜辺ですが、そこはちゃんと砂浜でした」
「南西部? キャプダグドとかで有名な辺りか? なら、そこもネイキッドビーチか?」
室長が言うと、彼女が『ネイキッドビーチ?』と言うから『所謂ヌーディストビーチだ』と教えてやる。
「ヌーディスト? それはトップレスとかそういうの?」
「いや、あそこら辺はスッポンポンです。因みにキャプダグドも全裸です。あそこは、そういう区域があって全裸で何でもします。レストランやホテルも買い物もスッポンポン」
彼女は余程びっくりしたようで、あんぐりと口を開け固まった。
「上だけじゃないんだ……スッポンポンか、そんなんで落ち着くの? うーーん、可愛い建物は見たいけど、それは困る。どこ見て良いか分からん。あー! ってか、昴にそんなの、見せたくないぞっ! ぜったーい、行かない! ダメっ!」
何やら興奮し始め、ブツブツ言う。
「ボンキュッボンの悩殺ボディの美女がいたら困るっ! ぜってー勝てん。僕の、こんな貧相なボディじゃ太刀打ち出来ん! 新婚旅行に行って[セクシー美女に盗られましたー]になんてなったら……うきゃー! この世のおわりだー! 天国から一気に地獄行き、うぴゃー!」
「いや、楽勝で勝てるから。オレは美女よりお前のがいい。……って何、その目。もしかして疑ってる?」
鼻をキュッと摘まんでやった。彼女は『うーっ』と唸り手を外すと物真似をし始めた。
「ダメよ~ダメ、ダメ!」
最近のブームに乗り彼女が、たまに真似る日本エレ*テル連合の朱美ちゃんの真似だ。
「うぉ! 上手い」
黒澤がそう言ってウケる横で、カクカクと動きながら『ダメよ~ダメ、ダメ!』と繰り返す。室長がプッと笑いからかう。
「昴ー、嫁ロボットなまえちゃん一号が壊れたぞー。取り替えるかあ?」
それを聞いて彼女がさっきよりちょっと大きな声で『ダメよ~ダメ、ダメ~!』と繰り返す。
「あー? 代わりがねーんだから、壊れるのは困るなー。なまえ、ちゅうすれば直るか? ん? 直るならするぞー」
ニヤリとして言うとピタッと止まり、まっ赤になった。面白いからもっと、からかう事にする。
「なまえちゃん、ちゅうしても、いいじゃないの~」
オレも彼女の真似して日本エレ*テル連合の相方の台詞を口に間合いを詰めて、彼女にちょっと迫る。
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