それを見た秋月家父と、阿久津さんが目を細める。
「いやー、なまえちゃんもすっかり娘さんらしくなったんだな。うちのお姉ちゃん達や海司と、元気に遊んでたのが昨日の事のように思えるのに。月日の経つのは早いですねぇ」
「ええ、裕子に会いにうちの病院に遊びに来てた頃は、やんちゃなちびっこでねぇ。擦り傷作っちゃ、しょっちゅう消毒してやったもんだ。それがなぁ……こんな姿を見られる日が来るとは……長生きするもんですな」
感慨深げに沁々と話す会話に秋月家母も加わる。
「本当ねぇ、すっかり綺麗な娘さんになって。仲睦まじくて微笑ましいわ。良かったわね。なまえちゃん」
「おばちゃん……」
彼女が言葉に詰まり、目を潤ませる。ハンカチを出し、化粧が落ちないように目元を押さえてやる。
「まぁー本当に優しくて素敵な人ね。あなたが、良い方とめぐり合って私も、安心したわ。なまえちゃん、二人でうんと、幸せになりなさい」
「はいっ」
彼女が秋月家母に笑顔で返事を返した。
その後食事会をし、桜湯も振る舞われた。桜湯を飲んだ彼女の顔が綻ぶ。
「なまえ、桜湯、気に入ったか?」
にこにこしながら、頷く彼女。穏やかに時間が流れ、秋月家父がふと思い出したように父さんに聞いた。
「以前、お会いした事があるような気がするんですが。なまえちゃんとブランコでお話してくれていた方ではありませんか?」
「え? 秋月さん、この方が? この子が[公園の優しいおじちゃん]って言ってた方なのかい?」
阿久津さんが、驚いたように父さんを見る。
「いや、お見かけした程度で間違っていたら申し訳ないのですが……」
「はい。私に間違いありません。あの頃、なまえさんとは公園友達でした」
父さんがちょっと茶目っ気を含ませ笑顔で返すと阿久津さんが、立ち上がり握手を求める。
「これは、これは。私はタイミングが会わなくてお会い出来なかったが、もしお会いする事があったらお礼を言いたかったんですよ。いやー、お会い出来て良かった。当時あなたの話をこの子がよくしましてね。本当に嬉しそうで……あなたは沢山の事を、この子に教えて下さった。本当にありがとう。感謝しますよ」
「感謝するのは、私の方です。なまえさんは私の命の恩人ですから」
『不思議なご縁ですねぇ』から始まって話は昔話にまで及び、盛り上がった。皆、和やかな笑顔で親交を深め、会はお開きになった。
帰り際にホテルのロビーで皆が軽く挨拶をかわす中、楓さんがやって来た。
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